もう2週間くらい前になるが東京イノベーションベース にて「AI日本国際映画祭」が開催された。東京国際(TIFF)と時期が重なっていたがこの映像をみるとやはりクリエイターの端くれとして、映画界に関わる人間としてこの動向に重大な関心を持たざるを得ないことを実感した。
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正直いって現在プロの映像制作の現場、あるいはプロの音楽制作の現場でAIが積極的に使われているとはいいがたい。それにはいろんな理由があるが、以下の理由が考えられる。
1.映像関係ではどちらかというとシロウトの人、がAIを使っている関係でプロの映像作家が使うということに対し、業界ではあまりよいイメージを持たれないこと
2. AIの元ネタとなる映像、音楽等の肖像権、著作権に関する権利に関するガイドライン、ルールが全く持って出来上がっていないこと。(現在はほぼ無法地帯に近い)
3. AIはまだ発展過程であるため、実際にプロの映像制作の現場での利用、使用に関するノウハウがまだ確立されているとはいいがたいこと
正直3-4年前のAIなら映像も画像もそして翻訳とかも「まだそんなレベルか」みたいなイメージがあったが、最近は違う。本当に驚くほど進化している。それはIT業界全体がAIの能力を構築するために力をいれているためで、実は現在大量のフリーランスのSE,プログラマー、翻訳、通訳、ナレーターが必要とされている。
かくいう私もアルバイトでAIがらみの翻訳、通訳の仕事をしている。特に重視されているのはRLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)というAIの強化モデル構築で「人間のフィードバックによる強化学習」をAIに行わせて、これを繰り返すことによってAIの性能を高める作業である。この作業をGoogle, Microsoft, Softbank といった会社が膨大なお金をかけて現在構築している
そのため僅か数年で恐ろしいほどの進化が見られたのである。
勿論ハリウッドとてそのあたりは十分に認識はしているが、それだけに導入も慎重である。一昨年映画会社と役者の組合-SAG AFTRAとの交渉CB(Collective Bargaining)で交渉がまとまりつつあった段階でストリーミングプラットホームのN社が「AIだけで映画作りたい、そのため役者さん一人100ドルで写真や声をいただきたい」などと言い出して大紛糾し、それがストライキに繋がった。2年後にCBの更新が行われるがAIの現状を考えると大もめにもめることは目に見えている。しかしその時に何とか映像、音楽等の肖像権、著作権に関する権利に関するガイドライン、ルールが決まってくれることを期待したい
ちなみにいっしょに動いている映画監督とでAIを使った映画企画を検討している。例えば既に亡くなった俳優を映画であたかも生きているかのように登場させる、大女優の全盛期、若い頃を再現して映画に採用する、といったことはAIだからこそできるのである。
実際ターミネーターシリーズでシュワルツネッガーの最初のターミネーターをAIで再現させるのは十分可能だし、ダースベーダーの声のジェームスアールジョーンズは生前ルーカスフィルムとAIに覚えさせたジョーンズ氏の声の使用許可に関する契約を結んでいる。それらの契約内容は像権、著作権に関する権利に関するガイドライン、ルール構築において大いに参考になるのではないか、と思われる。
いずれにせよ2年後のCB(Collective Bargaining)の交渉は間違いなく難航するだろう。それまでに映画制作でできることを考えなければならない
あとネットの黎明期にもあったのだが、新しい技術が普及するときにその技術を過信し「万能論」のようなものが蔓延る可能性もある。日本でもネット普及初期に「インターネット万能論」のようなものが蔓延り、ネットにちょっとでも批判的なことをいうと大炎上したことがあった。AIに関しても同じようなことが起きる可能性がある。実際最近のITの代表的論客である、ビルゲーツやザッカーバーグなどはAIの可能性を賛美しAIによる未来はあたかもバラ色であるかのような言質を広めている。 個人的にはあまり感心しない
AIの基本論理は言葉、音、動画のあとに何が来るかといった膨大なデータをいわばパターン認識のごとく認識し、複雑な計算を行うことになる。最近は人間の感情やニュアンス等のパターン認識を広め、ちょっとしたやりとりに関しては人間とも全く不自然なくできるレベルまで発展した。
とはいえ、あくまで既存のパターン認識の範疇であり、それとは違う0からの構築はAIにはできない。そこが人間の活路となる。
AIに関してはあくまで「新たなツール」という考え方でプロレベルのクリエイターが自分の作品にどう生かすか、について考えるべきでありそれは全く新たな表現が生まれる可能性もあるだろう。どのようなものかについてはまだわからない。
とにかくAIの可能性を過信してはいけないが、必要以上に怖れる必要もないのである。
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