« 2025年のお盆、昨今の風潮を見るにつけ | トップページ | サブスクで音楽の価値を下げるのをやめろ!ーただ同然でなくアーチストへの敬意を感じさせる分配を »

2025年8月17日 (日)

久々夏休み記事ー映画音楽にはなっていないが、映画音楽にしてもいいクラシック曲

気分転換に久々に「夏休み」的な記事を書きましょうか?

まあ一応映画音楽というジャンルに手を染めていますが、その中で映画の中で使うクラシック音楽の話がよく出ています。クラシック音楽を好んで使う映画監督としてすぐに思いつくのはSキューブリックで「2001年宇宙の旅」はほぼ全曲クラシック音楽、「時計仕掛けのオレンジ」なんか一応映画音楽担当にウエンデイ(当時はワルター)カルロスがいるにも関わらずベートーベンの第九を始め多くのクラシック音楽が使われました。

この例に限らず映画音楽とクラシック音楽は密接な関係を持っていますが、今日は映画音楽になるのに映画に使われていない曲として集めてみます。勿論ここでいう「映画に使われていない」というのは劇場公開された有名な映画という意味で、例えば「映画学校の学生が短編映画に使った例」は割愛させていただきます。そういうものを入れると映画作品というのは星の数だけありますので..

無論全ての映画音楽がこれにあてはまると言い切れない部分もありますが、だいたいのケースで映画音楽に使われやすい音楽というのは以下のような特徴を持っています。

1.表現豊かなメロデイやフレーズを盛った作品であること
2.ドラマチックな、起伏にとんだ音楽表現であること
3.印象に残る、耳に残る音楽であること

では私の知る限りでは映画音楽には使われていない音楽の例を揚げます。但し先ほどもいいましたように映画といっても星の数だけありますので私が把握していない例もありますので、もし以下にのべられている音楽が皆さんの知っている映画に使われていた例がございましたらご一報ください。勉強になりますので..

1.リスト:前奏曲 F Liszt : Le prelude

リストのこの作品はフランスの詩人ラマルティーヌの詩「前奏曲」に触発された交響詩で「人生は死への前奏曲」というテーマで架空の人物の人生をドラマ仕立てにした作品です。それゆえ音楽はドラマチックであり、複数の印象的なメロデイを持っており、華麗なオーケストレーションの曲です。なぜこの曲がドラマや映画に使われて来なかったのか不思議です。

2.ブラームス:交響曲第四番第二楽章の一部

ブラームスも映画音楽としてよく使われており、一番有名なのは交響曲第三番の三楽章が「さよならをもう一度」に使われており、他にも「ハンガリア舞曲」を始め、かなりヨーロッパ映画では常連といっていいですが、交響曲第四番の二楽章が使われた例は聞きません。
いわゆる「フリギア旋法」というグレゴリオ聖歌に使われているメロデイラインばかりが注目されていますが、交響曲第四番の緩徐楽章はブラームスの他の交響曲の緩徐楽章よりも美しく個人的にはお勧めです。
イメージですか?例えばこんな感じ(笑)
壮年になるまで結ばれなかった男女が最後にようやくめぐり合い抱擁するシーンとか(笑)


ブラームスもう1曲あります

3.ブラームス:悲劇的序曲

先ほどのラヴシーンの音楽とは打って変わって、今度はサスペンス調、「悲劇的序曲」というテーマ同様、何か大変なことが起きていることを描いた音楽としてはどうでしょうか?

ブラームスのこの曲は同時期に書いた「大学祝典序曲」と並んでブラームスにしてはきらびやかで効果的なオーケストレーションで創られており、まるでハリウッドのサスペンスドラマのテーマ曲のような感じだと思います。

4.マーラー:交響曲第五番第五楽章

マーラーも映画音楽として使われる常連で、ビスコンテイの名作「ベニスに死す」のテーマ曲(交響曲第五番第四楽章)やアニメ銀河英雄伝説のテーマ曲(交響曲第三番第一楽章、第六楽章)等がありますが、特に「ベニスに死す」の曲が強烈な印象を与え、当時ハリウッドの映画プロデューサーが「ベニスに死す」の音楽は誰が作ったのかビスコンテイに訪ねて「マーラーです」と答えると「これからの映画音楽は全てマーラーに作らせよう」という笑い話があるくらい(ベニスに死すは1971年公開、マーラーは1911年に逝去」)マーラーの音楽は劇的で感情をもりあげる、という面で映画音楽に最適な作曲家といっていいかもしれません

この曲は個人的にはSFとかの映画で同盟軍が帝国軍を破るときの勝利の音楽(笑)でいいのではないかと思います。スターウオーズの見過ぎ(!?)

5.ラフマニノフ:幻想的小品集~前奏曲 嬰ハ短調

ラフマニノフは映画音楽としても人気の作曲家で代表的な作品の大多数が映画とかドラマとかに使われているため、映画に使われていない曲を捜すのが大変でした。天性のメロデイ―メーカーであり、音楽がドラマテイックな要素がふんだんにあることからもう少し遅い時代に生まれていたら映画音楽作家の第一人者になっていたかもしれません。

有名な「ピアノ協奏曲第二番、第三番」などはあちこちで使われていますし、交響曲第二番の第三楽章はポピュラー曲のヒットソングにもなりました。名曲ヴォカリーズもどこに使われているかリストアップするだけでも大変な作業です。そのくらい映像用の音楽に多くの曲が使われているため、正直もう目ぼしい曲は殆ど残っていないのが現状です。

この曲はラフマニノフの有名なメロデイーの作品ではありませんが、代表作の1つでラフマニノフらしいムードを備えた作品でサスペンスやスリラーな映画のテーマ曲になるかもしれません。

6.ワグナー:「神々へのたそがれ」

ワグナーの楽劇の音楽は非常に映画音楽的に作られています。やや音楽の専門用語的になりますがワグナーの書く「動機」というのが各キャラクターのテーマになっています。例えば「ニーベルングの指環」の重要な登場人物であるジークフリードが登場すると「ジークフリードの動機」が演奏されます。そのキャラクターごとの「動機」の組み合わせで壮大な「楽劇」というものが生まれます。

この手法を踏襲したのがジョンウイリアムズが「スターウオーズ」で随所に「レイア姫のテーマ(動機?)」「ダースベーダーのテーマ(動機?)」が鳴ることで映像を盛り上げる手法です。

ただしこの曲は非常に映画音楽的に書かれているものの、楽劇ーオペラとあまりに密接な創られ方をされているので、実際の映画音楽の使用例はないと思います。あってもいろいろとアレンジ、というか曲として変形された形で使用されるケースが多いと思います。

7.シェーンベルク:「グレの歌」

シェーンベルクといえば「十二音技法」という無調音楽を始めあまり聞いていて心地よくない音楽の代表みたいにいわれますが、初期の作品は非常にロマン派的です。ストラビンスキーなんかもそうですが、初期の作品が代表作みたいにいわれてしまい、「十二音技法」は作品よりも「手法としてやってみた」という事実だけが取り上げられている感じです。
 初期の作品、ということでちょうど映画「ベニスに死す」でマーラー(役柄は「エッシェンバッハ」になっていますが、明らかにマーラーをモデルにしています)と毎日のように音楽議論をしていたのがシェーンベルクをモデルとした青年でまさにこの「グレの歌」や「浄夜」を書いていた時期ということができます。

いかがでしょうか?勿論映画音楽に使われそうな音楽はまだまだあると思いますが、有名な曲で印象的な曲は映画音楽としてよく使われるんだと思います。
私たち映画音楽作家はこういった歴史上の名曲に負けないような曲を書かないといけません。これは簡単なことではありませんが、私たちに課せられた命題です。

8月 17, 2025 音楽 |

コメント

コメントを書く