最近の記事


音楽ブログランキング
最新映画、話題作を観るならワーナー・マイカルで!
TSUTAYA online

« 最悪の2024年が終わってー来年のリベンジを誓い引き続き前進を | トップページ | 「劇映画 孤独のグルメ」レビュー »

2025年1月 4日 (土)

べらぼう!ー江戸時代の文化は町民による町民のための世界最先端のポップ文化だった

世界最古の長編小説の源氏物語の作者の紫式部を焦点にあてた「光る君へ」のあとには江戸時代の文化のヒットメーカーの蔦屋重三郎が主役の「べらぼう!」で二年連続日本が世界に誇れる文化遺産にまつわる話なので、個人的にはワクワクしている。

江戸時代は1615年の大阪夏の陣から1867年の戊申戦争の間、日本はいくつかの小乱を除けば250年もの間一度も戦争がない太平の社会を生きてきた。これは私の知る限りでは日本は世界でも他に例のない長期間に平和を謳歌した国といっていい。経済も発展し人々の間には生活にゆとりが生まれ娯楽に対するニーズが生まれた。町人の経済力は強くなり文化を育てる社会的背景も生まれた。出版界の版元が生まれ、曲亭馬琴、十返舎一九等が現代でいうベストセラー作家として活躍した。

Beauty_looking_backまた風俗画が町民のニーズに答え17世紀末の菱川師宣の「見返り美人」をきっかけに風俗画が発展した。この菱川師宣の「見返り美人」こそ「浮世絵」の先駆けとなる作品だったといえる。

江戸の吉原生まれの蔦屋重三郎は原五十間道に面した「蔦屋次郎兵衛店」を間借りし、本屋「書肆耕書堂」を営むようになり、書店では鱗形屋孫兵衛が中心となって刊行していた吉原細見『這婥観玉盤』の卸し、小売りを始めた。これは吉原に点在する妓楼やそこに所属する遊女のランク付け、芸者や引手茶屋などを記した略地図などが掲載されるいわゆる風俗情報誌で、鱗形屋が重版事件によって処罰され、吉原細見の刊行が困難になると、蔦屋が替わりに刊行を始め、その中で遊女の風俗画を掲載するようになった。そうして浮世絵の初期のスターといえる喜多川歌麿が活躍し、浮世絵時代の本格的な到来に結びついた。

まさに 町民による町民のための文化が育った時代=江戸時代

18世紀のヨーロッパなどは音楽も美術も王侯貴族、もしくは教会によって制作されたものであり、我々が良く知っている音楽ならばバッハ、ヘンデル、ハイドン、そしてモーツアルト(晩年を除く) 美術ならヴァン・ダイク、ベラスケス、ダビッドといった巨匠たちは全て王侯貴族や教会の使用人に過ぎなかったことを考えると、日本の町民文化はヨーロッパの市民運動が活発になり、文化に対する発言力が増した19世紀と比べても100年早い

その意味で浮世絵がヨーロッパの印象派やアールヌーヴォーを始めとした芸術運動に大きな影響を与えたのはある意味当然といえるかもしれない。結果「ジャポニズム」という大きなムーブメントが西洋美術界を折檻した。(現代の「マンガ」でも「第二のジャポニズム」が起きつつある。)

個人的には「大衆文化」という言葉は好きではないが、まさに江戸時代の浮世絵、仮名本、歌舞伎といった「大衆文化」は18世紀という社会に日本以外どの国にも存在しなかったものである。少なくとも我々が知る範囲では

この過程を大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」でどのように描かれるか楽しみである。

ちなみに私がドラマでどのように描かれるかについてのポイントを列挙したい

1. 遊郭である吉原がどのように描かれるか

蔦屋重三郎は吉原生まれの吉原育ちである。遊郭という公共放送であるNHKにとってはある意味デリケートな部分もあるところをどのように描くのか。ある意味興味深い。勿論浮世絵にしても歌舞伎にしても吉原との関係は切っても切れないのは事実である。

ちなみにヨーロッパでもロートレックやルオーが自作品に遊女(というか娼婦)を描いているのもある意味浮世絵の影響ということもできる。それは低俗ということでは決してなく、最下層もしくは社会の底辺に生きる人(花魁も含む)の視点から文化、社会、人間をみてそれを描くというのが芸術表現という面でも重要なポイントであり、浮世絵の美人画の多くが傑作として扱われるのもそうした「底辺の人々」をきちんと描いているからである、

2. 江戸のエンタメ小説の作家たちがどう描かれる?

江戸時代の庶民は寺子屋の普及もあり世界でもトップの識字率を誇っていた。それが驚くべき識字率だということはペリーが来航の時に「普通の庶民」が幕府の立て札から、貸本等の小説本をスラスラ読んでいる光景を見て驚愕していることからもうかがえる。

そしておそらく蔦屋が出版に加わった十返舎一九の「東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)」や滝沢馬琴の南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)」などの長編小説が人気を呼び、エンタテインメントとしての文学が生まれ、現代でもそれらは面白く読むことができる。

そういえば「べらぼう!」 ではまだ作家に関するキャステイングは発表されていない。いや、クリエイターもまだ僅かしかキャストが発表されていないが、そのうちにいろいろと発表されるものと思われる。

3. 「歌舞伎」に関してはどのように描かれる?

歌舞伎はもともと出雲阿国以降は遊女歌舞伎として遊女屋に広がったが、演劇芸術として確立され日本のシェイクスピアと呼ばれる近松門左衛門の台本により、上方(京都)と江戸で元禄時代に広まった。台本自体を蔦屋が関わった形跡はないが、美人画を流行させたときに幕府から規制が加わった後、役者絵へと傾注していくことになる。この段階で蔦屋と歌舞伎がかなり密接な関係が生じてくるが、そこの過程をどのように描くのか興味深いところである。

4. 「東洲斎写楽」はどのように描かれる?

浮世絵界のスーパースターといわれる東洲斎写楽ー実は謎の人物である。活動期間はわずか10カ月といわれたが、インパクトの強い絵を数多く残した。人物像に関しては諸説あるが確定していない。現在阿波徳島藩主蜂須賀家お抱えの能役者斎藤十郎兵衛が有力説となっているが、ドラマの「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」 で果たしてその説をとるのだろうか?

5. 「江戸後期」の浮世絵について描かれるのか?

蔦屋重三郎自体は1797年、47歳という現代の我々の感覚だと若死の年齢で没している。しかし浮世絵の大スターである葛飾北斎の若かりし頃は北斎の才能を見抜いて使っており、蔦屋重三郎死去以降に創作の絶頂期を迎える。北斎と人気でも芸術評価でも二分する歌川広重についてもどの程度言及されるのか、されないのか、大変興味がある。日本の文化の至宝といっていいものだからである。

以上、世界中に影響を与えた江戸のエンタテインメント文化、その誕生の過程が描かれることに対し、大きく注目しているし大きな期待ももっている。

「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」公式サイト

https://www.nhk.jp/p/berabou/ts/42QY57MX24/

1月 4, 2025 文化・芸術映画テレビ18- |

コメント

コメントを書く