AIとエンタテインメント産業,そしてこれからの生き方についての所感と考察
A.I.(人口知能)
今後の社会にとてつもない変化をもたらすだろうAI、勿論今後のエンタテインメント産業に対する影響が避けられないだろうこの新たなツールに関して、現在アメリカの映画界が大きく揺れている。
WGA(全米脚本家協会)のストライキが既に先月よりスタートしており、アメリカの映画産業と全米俳優協会 SAG-AFTRAの労使協定 Bargaining Agreement が6月30日で切れる関係で、7月1日からストに入ることはほぼ確実視されている。いずれもAI (人口知能)が交渉の議題にあげられている点で、これは一筋縄ではいかない。特にアメリカのクリエイターはA.I.が自分たちの仕事を奪う脅威として位置づけている向きが強く、AI (人口知能)使用制限を含むルール作りを要求している模様。特にWGA(全米脚本家協会)のAIに関する危機感は強く、<現時点でも激しいせめぎ合いが続いているようである。
■Hollywood writers at rally say they’ll win as strike reaches 50 days
https://apnews.com/article/writers-strike-hollywood-march-rally-actors-1e87e496db3581f251ee4ad7664a96b2
まあ全米脚本家協会は「必ず勝って見せる」といきまいているが、事態解決にはまだ時間がかかるだろう
そんな中、SAG-AFTRAとともにストライキに入ると思われた全米監督協会(DGA)はAMPTP(全米映画テレビプロデューサー協会)とのストライキは回避される見通しとなった。AMPTPの切り崩しが成功した感じで俳優協会の人間から反発も出ているという。
■Directors Guild Avoids Strike, Makes Deal with Streamers and Studios
https://gizmodo.com/directors-guild-agreement-amptp-wga-1850504440
それだけA.I.に対する姿勢が監督と俳優、脚本家と違うのかもしれないが、その前にA.I.に関して、クリエイターはただ忌み嫌うのではなく実際AIになにができるのか、正しい理解をしてからきちんと考えた方がよいように思う。
現段階で普及しているA.I.の機能は以下のとおり。
·画像認識
·音声認識
·言語識別
·制御
·予測*
上記の中で画像認識から制御の上から4つまでは既存のコンピューターで可能だが、一番下の「予測」というのがA.I.にしかできない機能だという。
そして脚本家や役者が恐れているのはA.I.によって以下のことが可能になるからである。
■【A.I.映画研究所】映画の脚本をA.I.に書かせてみた【Vol.01】
https://vook.vc/n/5733
確かに脚本ができたようである。
また画像生成A.I.「Stable Diffusion」を活用した実在しない女性の画像を生成できることが、SNSでも話題になった。
「リアルと判別不能」ついに動き出した“AI美女” 自動生成される“作品”に著作権はあるのか?
https://times.abema.tv/articles/-/10079112
まあ確かにこれだけ見せられれば、そのうちクリエイターなどいらなくなる、とか脚本家などもいらなくなる、などという論法も出てくると思うが、果たしてそう話が単純なものだろうか?
実際にAIを研究している人がこう書いている
■AIは村上春樹になれない 小川哲さんに聞く「人間との境界」 決定的な違い生む身体の有無
https://mainichi.jp/articles/20230623/dde/012/040/007000c?
今SNS等で蔓延っている「映画はすべてA.I.が作る」「音楽も全てA.I.が作る」、勿論ただ作るだけなら理論的に可能だ。実際に大真面目に考えている輩がいるが、A.I.に「今の売れセンのメロデイ」や「売れセンの歌詞」とかをA.I.に覚えさせて作らせたとする。ヒット曲のあらゆるノウハウで生成された曲をリリースすることは可能だ。だがその曲が果たして本当にヒットするかはまた別の話
そんなので簡単にヒットするなら誰も苦労していない。音楽制作なんてそんな単純なものではない
ちなみに日本のJ-popは「売れセン」なんてことを言いだしてからリリースされた曲が極端につまらなくなった、ということが自分の経験上感じている。CDが売れなくなった、という話もほぼ同時期から出始めた。紙の上、データ上は「売れるはずだ」というデータでも実際にはそう簡単にうまくいかないものである。A.I.に過剰に期待している向きも音楽業界にあるが現実はそううまくは行かない。そういうものだ
上記の文章にも書いてあるようにAIには生成能力合成能力はあるが小説なら村上春樹の文章は書けない、絵ならゴッホのような絵は書けない、音楽ならベートーヴェンやワグナーのような曲は書けない。だからA.I.に勝つにはクリエイターの自己鍛練次第ということ
まあIT業界で話題になっている汎用人工知能(AGI)のリスクを議論が行われており、それはAI研究者が戸惑いを感じているほど人間が制御できない可能性が出てきているというので、そちらは一つ間違えると映画「ターミネーター」の「スカイネット」のような恐ろしいものになる可能性もある。そちらは慎重な研究が必要だろう
しかしA.I.が人間がコントロールできる範囲にあるツールである限りは、それは新たなツールが出現したというのと同じであり作曲であればDAW やDTMにAIが組み込まれた、と考えれば進化したツールが近いうちに出てくるだろう
ちなみに打ち込みやサンプリングシンセが普及したらもはや生音を使う人間なんていなくなるだろう、という言質が一時まことしやかに流れたが生音が現実、今でも使われているのは事実である。要はクリエイターの新たなツールとして新たな表現の可能性を追及すればいいだけのことである。
A.I.は確かに人類や社会を革命的に変える可能性があり、しかも今の普及のスピードを考えるクリエイテイブの現場に普及することをさけることはできない。WGAやSAG-AFTRAでの交渉がどうなるかわからないが交渉結果は世界のクリエイテイブの現場にも大きな影響をもたらすだろう。
とにかく映像や音楽のコンテンツのボーダーレス、グローバル化に加え、A.I.というまた社会を劇的に変化させるものまで現れた。その意味でも人類はまさに数百年に一度という大変革の時代に今生きているといっていいかもしれない
そんな時代にどのように生きていけばいいのだろうか?
一つだけはっきり言えるのは『A.I.との共存社会では「考える力」が必要となる』という点だろう。つまり人間にしかできない力(はず)である考えること、つまり自分の頭で何でも考えて自分で積極的に意思表示をし、自分で作り出す行動を行うこと、これが重要になる。
だがこれは現代の日本人が一番苦手としていることではないか?
日本人は周囲と同調することばかり考えて自分の頭で考えることをしない人が本当に多い。それが政治とか社会に対する無関心を呼び、政府がどんなメチャクチャなことをしていても支持し続けるというおかしな状況を作っている。
A.I.が普及した社会は自分の頭で考えない人は社会にとって無用の長物になってしまう可能性が高い。何も考えずただただ流されているだけの日本人の将来は暗いといっていい。A.I.時代が本格的に到来するにあたって「思考停止」はやめて自分で考えて自分で作り出す行動する癖をつけるしかない。
それがこれからの社会で生き残る唯一の道といえるかもしれない
6月 24, 2023 パソコン・インターネット文化・芸術思索,考察 | Permalink




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