大野リリース作品リスト

ストリーミングページ

« 2021年8月 | トップページ | 2021年10月 »

2021年9月28日 (火)

映画「MINAMATA 」レビューー本来なら日本人が作らなければならない作品が見事な映画となっていた

映画「MINAMATA 」については以前も当ブログにて紹介させてもらった。

■ジョニーデップ主演「MINAMATA」(9月23日全国公開) 水俣市が後援を拒否 ー行政の変わらぬ体質と日本の民度
https://kyojiohno.cocolog-nifty.com/kyoji/2021/09/post-fca8e7.html

そして今日公開初日からやや遅れて鑑賞

Fawp1v8uuaue19b

以前も書いたが、一応映画関係に関わっている者、さらに大学のゼミの教授が哲学者として水俣問題に深くかかわっていたこともありこの問題について語らないわけに、見ないわけにはいかないと思っていた。 

ジョニーデップ自身が企画からかかわっていたこの映画、本来なら日本人自身が作らなければならないこの映画を見事な映画作品に仕上げている。昔はハリウッドが日本を描くとどうしても日本人がみて違和感を感じる描き方が多かったがこの映画はそんなところは全くない。ジョニーデップの演技もすばらしく、映画の内容も多少脚色はあるもののほぼ史実通りに水俣の問題を描いている。この作品が見事に水俣問題を描いているだけに、今の日本人の「臭いものに蓋」をする体質には情けなく恥ずかしい気持ちになった。「考えること」を放棄した日本人、「都合の悪い所」は見ない=臭いものに蓋をする、これを続けている限り日本という国が世界から尊敬されることはないだろう。この映画をみてそれを実感した次第

日本人キャストで真田広之さんや浅野忠信さんは二人とも英語が堪能なのにこの映画では英語のセリフは1つもなかったのが驚いた。アイリーン役の美波さんはところどころたどたどしいところはあったものの頑張って英語のセリフで演じていた。國村さん、今回はかなりきちんとした英語のセリフを言っていた。キルビルのイメージがいまだにあるので..(^^;)

またユージンスミスが報道写真史上最高傑作の1つといわれる水俣患者を入浴させるシーン ”Tomoko and Mother in the Bath”その撮影の模様を描いたシーンは実に感動的だ。

本当にアメリカ人に日本の戦後最大の公害問題を見事に描かれてしまったが、この映画を見て少し救われている点があるとすれば水俣市民のチッソへの市民運動に光をあて彼らの裁判で勝利する様子を克明に描いているところだと思う。日本人は権力に従順な人間、長いものに巻かれるばかりの人でなくきちんと声を揚げて社会運動してきた人たちもいたという点。そのことに焦点をあててくれた点がこの映画をみて救われた気分になった。これはアメリカ人監督だからそういう描き方になったのだろうか?日本では市民運動、社会運動というものをどうしてもネガテイブに受け取る人が少なくないことも事実なので...

最後に2013年に当時の安倍総理が銀による健康・環境破壊を防ぐための「水銀に関する水俣条約」外交会議の開会式(9日)にて「日本は水銀による被害を克服した」との発言は水俣患者と家族の気持ちを踏みにじるものだ、という批判を映画の最後にテロップでいれているのも非常に評価できる点といえる

Enf4sc6veais3jk

公式サイト
https://longride.jp/minamata/

予告編

 

リベラル派だけでなく、政権よりの人、保守的な考えの人も日本人ならぜひ見るべき映画と推奨したい。

監督 アンドリュー・レヴィタス
脚本 デヴィッド・ケスラー
製作 ジョニー・デップ
アンドリュー・レヴィタス
ビル・ジョンソン
ガブリエル・タナ

キャスト

ジョニー・デップ: W・ユージン・スミス役
真田広之 - :ヤマザキ・ミツオ役
美波 -: アイリーン役
國村隼 :ノジマ・ジュンイチ役
加瀬亮: キヨシ役
浅野忠信 :マツムラ・タツオ役
岩瀬晶子:マツムラ・マサコ役
ビル・ナイ : ロバート・"ボブ"・ヘイズ役

劇場 (全国200を超える劇場で公開)
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=minamata

 

 

 

9月 28, 2021 経済・政治・国際映画テレビ18- | | コメント (0)

2021年9月17日 (金)

映画「信虎」試写会にて鑑賞ーあまり焦点があたることがない武田信玄の父の晩年を描いた興味深い時代劇

特に関係者でもないんですが、試写会にお招きいただき拝見させていただきました。最近コロナの影響で見たい映画をあまり見ていないのと、基本的に出不精のためこういう機会がないと出向かないかもしれません。

242244856_4329912450389172_3348076877415

歴史ドラマであまり焦点があたることがない、武田信玄の父の「武田信虎」のそれも信玄没後の最晩年を描いた作品。
武田信玄が登場する歴史ドラマではたいてい悪役として描かれるけど、この映画では主役、とりわけ晩年武田氏滅亡の可能性を感じて苦悩しあらゆる手をうつ様子が描かれています。

武田信虎を演じたのはあまり映画では主役をはることがない寺田農(てらだみのり)さん。ご存じない方も多いでしょうが「天空の城ラピュタ」でムスカ役をやった人といえばお分かりの方も多いでしょう。老齢ながら知力の衰えない、威厳のある武田信虎を演じられていました。

一応歴オタの端くれなので、この手のドラマは好きなんで、私自身は見入ってしまいましたが戦国時代に対する一定の知識がないとついていけないところもあるかもしれません。しかし大河ドラマのような「セット」ではなく衣装もよかったしと本物の寺を借り切って撮影した等が逆にリアリテイが感じられ、実際武将同士のやりとりも全く違和感なく見ることができました。史実もこの手の時代劇ではかなり忠実に描かれているのではないかと思います。

さて一応映画音楽作家の端くれなので、今回極めて評判のいい池辺晉一郎氏の音楽について。
金子秀介監督は池辺氏に自由に作らせた、との話ですがその言葉通り伸び伸びと作業をしていることを感じました。まあ池辺氏の実績というのもあるのでしょうが個人的にはうらやましいです。なかなか日本の映画の現場では音楽を自由にやらせてもらえないので。

テーマ曲が時代劇にマッチしている、ということで好評ですが、おそらく楽器編成は弦(6-4-2-2 それと1?コントラバス目立たなかったけどあったかな?)管楽器はオーボエとトランペット
和楽器で琵琶と鼓を始めパーカッション類(大太鼓もあったかな)日本ではなかなかジョンウイリアムス級のオーケストラの予算は出ないけど、このレベルの演奏家の数なら何とかなるんでしょう。
まあベテランでそろそろご高齢でもあるので、そういう音楽の創り方になっていると思いました。

私は時代劇って結構好きでいつか時代劇の映画の音楽もやりたい、と思ってますが、そもそも時代劇ってなんでこんなに減ったんでしょうか?。もちろん衣装とか小道具とかでお金がかかる、というのもあります。でもそれだけではないような気がしますね。

1つ思うのは歴史に詳しい人とそうでない人の差が激しいこと、昔の俳句、和歌という文語体(「信虎」ではちゃんと字幕で表示しています)に対して抵抗感(?) があること、というのも大きいかもしれません。若い人で戦国時代の登場人物と江戸時代の登場人物を混同する人が少なくないですしね

その意味ではオーデイアンス(観衆)の平均レベルも落ちたのかなあ?という気もしますがいかがでしょうか?

映画「信虎」
10月22日~ 山梨・TOHOシネマズ甲府【先行公開】
11月12日~ より全国TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ錦糸町その他で劇場公開

https://nobutora.ayapro.ne.jp/

劇場情報

https://nobutora.ayapro.ne.jp/info/theater

○監 督:金子修介 ※『デスノート』2部作、『(平成)ガメラ』3部作
○共同監督・脚本・製作総指揮・プロデューサー:宮下玄覇
○音 楽:池辺晋一郎 ※『影武者』
○演 奏:東京コンサーツ
○撮 影:上野彰吾
○照 明:赤津淳一
○美術・装飾:宮下玄覇 籠尾和人
○衣 裳:宮本まさ江
○特殊メイク・かつら:江川悦子
○VFXスーパーバイザー:オダイッセイ
○編 集:宮下玄覇 山本浩史
○整 音:臼井 勝
○音響効果:丹 雄二
○武田家考証:平山 優
○題 字:森田彦七 ※『乱』揮毫・今井凌雪門下
○助監督:村上秀晃・西山太郎
○美術装飾担当 助監督:生駒 誠
○製作担当:丹羽邦夫・安達 守
○プロダクション統括:芳川 透
○プロデューサー:西田宣善
○協力プロデューサー:榎 望

キャスト

・寺田 農 :武田信虎・無人斎道有 役(主役)
・榎木孝明 :上杉謙信 役 ※「天と地と」上杉謙信 役
・渡辺裕之 :織田信長 役
・永島敏行 :武田信玄/武田逍遥軒 役(二役)
・矢野聖人 :黒川新助 役
・谷村美月 :お直(末娘)役
・荒井敦史 :武田勝頼 役
・柏原収史 :柳澤保明(吉保)役 ※山梨県出身
・隆 大介 :土屋伝助(家老)役 ※「影武者」織田信長 役
・伊藤洋三郎 :清水式部丞 (家老)役 ※静岡県出身
・左伴彩佳(AKB48):お弌(信虎の娘)役 ※山梨県出身
・杉浦太陽 :一条信龍 役
・石垣佑磨 :武田信直(青年期の信虎)役
・堀内正美 :長坂釣閑斎 役 ※父が山梨県出身
・安藤一夫 :跡部勝資 役
・川野太郎 :春日弾正忠(虎綱)役
・葛山信吾 :山県昌景 役
・永倉大輔 :馬場信春 役
・井田國彦 :内藤昌秀 役
・嘉門タツオ :安左衛門尉 役
・螢 雪次朗 :日伝上人(久遠寺住持) 役
・橋本一郎 :穴山信君(梅雪斎)役
・森本のぶ :矢作勘太夫役
・剛たつひと :孕石源右衛門尉 役 ※山梨県出身
・外波山文明 :今井信元(かつてのライバル)役 ※長野県出身

 

 

 

9月 17, 2021 映画テレビ18- | | コメント (0)

2021年9月13日 (月)

ジョニーデップ主演「MINAMATA」(9月23日全国公開) 水俣市が後援を拒否 ー行政の変わらぬ体質と日本の民度

一応映画関係に関わっている者、さらに大学のゼミの教授が哲学者として水俣問題に深くかかわっていたこともありこの問題について語らないわけにはいかないと思っていた。

ご存じ水俣病を世界に伝えたフォトジャーナリスト、ユージン・スミス(1918-1978) を描いた映画『MINAMATA』が9月23日に全国の劇場で公開される。その公開に先立って水俣市での上映会で水俣市が後援を拒否したことが報道された

■ジョニー・デップ主演映画の上映会、後援を拒否した水俣市に監督「何が優先されているのか」と苦言
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/minamata-3?

私は大学の講義でこの水俣問題についていろいろと聞いたが、ひとことでいって高度成長時代の日本の「経済優先」の論理で水俣による公害病に目をつぶり明らかに当時の日本窒素肥料(現チッソ)も最後まで水銀化合物が公害の原因であることを認めなかったこと、そして行政も水俣市がチッソの企業城下町であったことから、被害を実質的に見て見ぬふりをしてきた経緯もある。そうした話を授業で聞かされていた。私の大学のゼミの教授の水俣問題についてのさまざまな業績は以下を参照されたい。

第2章 水俣病史における「不知火海総合学術調査団」の位置 人文・社会科学研究の「共同行為」について
https://www.ritsumei-arsvi.org/publication/center_report/publication-center14/publication-115/

市井三郎(wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%82%E4%BA%95%E4%B8%89%E9%83%8E

市井三郎 自主ゼミページ
http://www.ichiisaburo.com/

水俣市がこのことをテーマとした映画の後援を拒否したことはその水俣市の体質が全く変わっていないことを示している。

そもそもこういう映画を日本人ではなく海外の監督に監督されてしまうこと自体が恥ずかしい事実だが、なおかつ日本側がその史実に向き合おうとせず協力を拒否する姿勢は国際的にも日本人として恥ずかしい。

先の大戦についてのこの国の対応でもいえることだがいつまでも不都合な事実を隠す、臭いものに蓋をする姿勢を日本人が続けるようでは日本という国の民度が世界に問われることになる。これらの行為自体が日本が三流以下の国に堕ちてしまう原因になる

日本人の端くれとして恥ずかしいと言わざるを得ない

映画 MINAMATA  9月23日より全国の劇場にて公開される。

Enf4sc6veais3jk

公式サイト
https://longride.jp/minamata/

予告編

監督 アンドリュー・レヴィタス
脚本 デヴィッド・ケスラー
製作 ジョニー・デップ
アンドリュー・レヴィタス
ビル・ジョンソン
ガブリエル・タナ

キャスト

ジョニー・デップ: W・ユージン・スミス役
真田広之 - :ヤマザキ・ミツオ役
美波 -: アイリーン役
國村隼 :ノジマ・ジュンイチ役
加瀬亮: キヨシ役
浅野忠信 :マツムラ・タツオ役
岩瀬晶子:マツムラ・マサコ役
ビル・ナイ : ロバート・"ボブ"・ヘイズ役

劇場 (全国200を超える劇場で公開)
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=minamata

 

 

9月 13, 2021 経済・政治・国際映画テレビ18- | | コメント (0)

2021年9月 6日 (月)

久々音楽教室著作権問題の現状とこの問題に関する見解

当ブログをお読みの方は以前私はこういう運動をしていたことを覚えていらっしゃるかもしれない

 ■音楽教室から著作権徴収ーJASRACは過剰な著作権「演奏権」信託権濫用による徴収をやめよ!!(緊急声明)
https://kyojiohno.cocolog-nifty.com/kyoji/2017/02/jasrac-99bc.html

署名活動も行っていた

■音楽教室から著作権料を取らないで!! 日本の音楽教育存続のために
https://www.change.org/p/%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E6%95%99%E5%AE%A4%E3%81%8B%E3%82%89%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E6%96%99%E3%82%92%E5%8F%96%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A7-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E6%95%99%E8%82%B2%E5%AD%98%E7%B6%9A%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB

なぜ私が反対するのか、その理由についてはこちらをお読みください
JASRAC音楽教室から「著作権演奏権徴収」ーなぜ私は反対するのか?どこに問題があるのか(長文注意!!)
https://kyojiohno.cocolog-nifty.com/kyoji/2017/02/jasrac-03a3.html

これだけの活動を行っている関係上、この問題は決着がつくまで見守ろうと思っているが、確かに最近動きがない。そんな折、こんな記事をみつけた。

■結局、「JASRAC vs ヤマハ音楽教室」ってどうなったのか
https://rocketnews24.com/2021/09/06/1532765/

尚、上記の記事ではヤマハとJASRACとの訴訟と書いてあるがこれは誤った印象を与える。実際はほかの大手音楽教室や零細な音楽教室を含む集合体が共同で起こしている訴訟である。私も面識があるがたまたまその集団の代表がヤマハ音楽教室の関係者であるにすぎない

裁判だが結論からいってまだ続いている。上記の記事にもかいてあるが今までの裁判の内容は以下の通りです

1.地方裁ーJASRAC勝訴ーJasracの主張を全面的に認める

                           ↓

2. 第二審でも、音楽教室側に著作物使用料の支払い義務があるという結論は変わらず。ただし、「生徒の演奏については著作権対象外」と音楽教室側の主張も一部認めている。

そして現在最高裁にて審議中である

私も一応「売れない作家の端くれ」(笑)なので音楽教室からの著作権支払いを否定しているわけではない。ただし今回の発案の内容で一部無理がある点があると感じている。それは拙ブログ「なぜ私は反対するのか、何が問題なのか?」を読んでいただければ幸いである。

私が特に違和感を感じたのは「生徒の演奏」に著作権の演奏権を適用しようとした点である。音楽の世界を知らない人には理解できないかもしれないが音楽教育は基本「個人レッスン」を中心に進行され個人レッスン」は演奏家の場合は「演奏の技術」を習得、練習するための「訓練」の時間のことをいう。著作権法では「公衆に聞かせるための演奏は使用料が発生する」と書かれているが、音楽教室では音楽的にみて「演奏」といわれるまでのレベルになるための「訓練の時間」であり、教師以外はその「演奏の訓練、練習」を聞いている人間はいないーつまりそこに聴衆はいないのだ。パリ改正条約に「演奏権」の規定がない、よく考えれば当たり前の話だ。なぜなら教育課程では「演奏」は一般に「訓練」であり人からお金をとるレベルの「演奏」ではないからである。これは国際的にコンセンサスが取れているはずであり、「訓練」「教育課程」である以上「演奏権」の規定などする必要はない

この考えは今も変わらない

それゆえ二審の「生徒の演奏については著作権対象外」という判断が出たことは評価している。

そして教材その他で発生する著作権料は今までも発生してきたし、これからも発生するのは当然だ。殆どのケースでは楽譜、教材を買うことで出版社その他から著作権料が支払われる。これは当たり前の話である。

さてそれを考えると「生徒の演奏については著作権対象外」という判断が出たが「教師の模範演奏は著作権の対象になるのか」。いってみれば「訓練」の模範を見せる場合生徒を「聴衆」ととらえるのかどうか?その判断については分かれるかもしれない。

ただし仮に発生したとしても1レッスンでかなりの少額になるべきである。繰り返すが音楽教室の大多数が「個人レッスン」である。殆どが1対1である。包括契約にしたとしてもそんなに高額にすべきではないし、それをやれば町のピアノ教室、音楽教室の大多数がやっていけなくなるだろう。それは絶対に避けなければならない。

ここ10年自民党政権になって以来日本は「弱者に配慮する」ということをやらなくなった。今回の音楽教室の著作権問題もその流れの中から出ているような気がしてならない。

 

9月 6, 2021 経済・政治・国際音楽16-23 | | コメント (0)