映画「MINAMATA 」レビューー本来なら日本人が作らなければならない作品が見事な映画となっていた
映画「MINAMATA 」については以前も当ブログにて紹介させてもらった。
■ジョニーデップ主演「MINAMATA」(9月23日全国公開) 水俣市が後援を拒否 ー行政の変わらぬ体質と日本の民度
https://kyojiohno.cocolog-nifty.com/kyoji/2021/09/post-fca8e7.html
そして今日公開初日からやや遅れて鑑賞
以前も書いたが、一応映画関係に関わっている者、さらに大学のゼミの教授が哲学者として水俣問題に深くかかわっていたこともありこの問題について語らないわけに、見ないわけにはいかないと思っていた。
ジョニーデップ自身が企画からかかわっていたこの映画、本来なら日本人自身が作らなければならないこの映画を見事な映画作品に仕上げている。昔はハリウッドが日本を描くとどうしても日本人がみて違和感を感じる描き方が多かったがこの映画はそんなところは全くない。ジョニーデップの演技もすばらしく、映画の内容も多少脚色はあるもののほぼ史実通りに水俣の問題を描いている。この作品が見事に水俣問題を描いているだけに、今の日本人の「臭いものに蓋」をする体質には情けなく恥ずかしい気持ちになった。「考えること」を放棄した日本人、「都合の悪い所」は見ない=臭いものに蓋をする、これを続けている限り日本という国が世界から尊敬されることはないだろう。この映画をみてそれを実感した次第
日本人キャストで真田広之さんや浅野忠信さんは二人とも英語が堪能なのにこの映画では英語のセリフは1つもなかったのが驚いた。アイリーン役の美波さんはところどころたどたどしいところはあったものの頑張って英語のセリフで演じていた。國村さん、今回はかなりきちんとした英語のセリフを言っていた。キルビルのイメージがいまだにあるので..(^^;)
またユージンスミスが報道写真史上最高傑作の1つといわれる水俣患者を入浴させるシーン ”Tomoko and Mother in the Bath”その撮影の模様を描いたシーンは実に感動的だ。
本当にアメリカ人に日本の戦後最大の公害問題を見事に描かれてしまったが、この映画を見て少し救われている点があるとすれば水俣市民のチッソへの市民運動に光をあて彼らの裁判で勝利する様子を克明に描いているところだと思う。日本人は権力に従順な人間、長いものに巻かれるばかりの人でなくきちんと声を揚げて社会運動してきた人たちもいたという点。そのことに焦点をあててくれた点がこの映画をみて救われた気分になった。これはアメリカ人監督だからそういう描き方になったのだろうか?日本では市民運動、社会運動というものをどうしてもネガテイブに受け取る人が少なくないことも事実なので...
最後に2013年に当時の安倍総理が銀による健康・環境破壊を防ぐための「水銀に関する水俣条約」外交会議の開会式(9日)にて「日本は水銀による被害を克服した」との発言は水俣患者と家族の気持ちを踏みにじるものだ、という批判を映画の最後にテロップでいれているのも非常に評価できる点といえる
公式サイト
https://longride.jp/minamata/
リベラル派だけでなく、政権よりの人、保守的な考えの人も日本人ならぜひ見るべき映画と推奨したい。
監督 アンドリュー・レヴィタス
脚本 デヴィッド・ケスラー
製作 ジョニー・デップ
アンドリュー・レヴィタス
ビル・ジョンソン
ガブリエル・タナ
キャスト
ジョニー・デップ: W・ユージン・スミス役
真田広之 - :ヤマザキ・ミツオ役
美波 -: アイリーン役
國村隼 :ノジマ・ジュンイチ役
加瀬亮: キヨシ役
浅野忠信 :マツムラ・タツオ役
岩瀬晶子:マツムラ・マサコ役
ビル・ナイ : ロバート・"ボブ"・ヘイズ役
劇場 (全国200を超える劇場で公開)
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=minamata
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