クロエ・ジャオ監督やユンヨジョンのオスカー受賞とアジア勢進出に歴史が動いたが、日本だけが置いて行かれている構図がより鮮明になった第93回アカデミー賞
本日日本時間の午前9時頃から第93回アメリカ映画アカデミー賞が開催された。
詳細な受賞者はオスカーの公式サイトをご覧いただくとして(英語ですが)
https://www.oscars.org/oscars/ceremonies/2021
どんどんグローバル、ボーダーレス化している映画の世界、今年も歴史が動いた。アジア系の女性のクロエ・ジャオ監督 が映画「ノマドランド」でアカデミーの監督賞と作品賞を受賞した。北京市で生まれ育ったジャオ監督は現在はアメリカ国籍を取得しているとはいえ、れっきとした中国人である。
女性監督としては『ハート・ロッカー』(2008)のキャスリン・ビグロー監督以来史上2人目、アジア系女性監督としては史上初の快挙だ。
これは素晴らしい快挙であり、手放しで礼賛したい
また同じアジア系で韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョン監督の"Minari"でユン・ヨジョンが助演女優賞でオスカーを獲得。これもまた快挙だ。彼女は韓国人女優ながらアメリカ生活も長いためとても流暢な英語でユーモアたっぷりに受賞スピーチをしていたが、あまりに素晴らしかったのでここで動画を掲載させていただく
Yuh-jung Youn wins Best Supporting Actress, making history as first Korean to win an #Oscar in the category - and her speech was hysterical. https://t.co/ScDUrk0xaG #Oscars pic.twitter.com/lwhi3xYu2c
— Good Morning America (@GMA) April 26, 2021
今アメリカ国内では凄まじいほどのアジア系へのバッシング、攻撃があり殆どのアジア系が何らかの身の危険を感じたことがあるという。そんな中でも実績を正当に評価するのはアメリカのアメリカたるところだ。
一つだけいえるのはアジア系ヘイトをむき出す奴らにとって、中国人、韓国人、そして日本人の見分けなどつかない点だ。アジア系というだけで敵意をむき出しにして攻撃してくる。友人が大勢アメリカやカナダに在住しているので彼らの安全について心配している
しかしそのレイシスト連中からは同じアジア系として「見分けのつかない」日本人だけはこの映画のグローバル、ボーダーレス化の中で置いて行かれている印象はぬぐえない
例えばアニメは今回日本作品のノミネートはなく、日本で大ヒットして海外でも公開されている「鬼滅の刃」などはノミネートされなかった。「鬼滅の刃」はアニメそのものから背景までかなり丁寧に描かれているが、台詞をしゃべる上でのリップシンクの部分とか、今や海外では当たり前になっているスキルが取り入れられていない。モーションキャプチャーその他を取り入れれば可能だが、おそらくバジェットとかいろんな事情があるのだろうと思う。いずれにせよジャパンバジェットという低予算の範疇では世界に太刀打ちできなくなっている、というのが事実ではないかと思う。
そもそも「鬼滅の刃」に限らず日本のアニメはもはや世界中から興味を持たれているのでたいていの場合全世界で劇場公開が可能である。しかし日本の映画会社はその体質として日本国内のみでリクープする予算の算出を行っている。確実に海外で公開できるにも関わらずである。
結果として「ジャパンバジェット」による制作になり、現場のアニメーター、クルーはブラックな低賃金で働くことを余儀なくされる。アメリカでは云うに及ばず、中国でも最低3倍の給料で働けるにも関わらず、日本は「ジャパンバジェット」にこだわるためアニメーターたちの待遇改善ができない。
結果として日本の映画界は音楽界同様、お隣の韓国は勿論のこと、今や世界中からおいていかれていることを実感する。さらに事態を深刻にしているのは、そのことをなんとも思わない業界関係者が多すぎるのが最大の問題である。現状を改革しよう、という関係者がいない、とはいわないが極めて少ないのである。
音楽も世界がCDからサブスクに変わったことで劇的な変化に日本の業界は対応できず、世界から置いて行かれているが、この日本のエンタテインメントの状態、かなり深刻でどこから手をつけたらいいのか、わからないくらいである。
暗い話ばかりだと書いているこちらも気がめいるので少しは明るい話にしよう。
そのアニメーション、ピクサー制作の「ソウルフルワールド」の音楽を担当したトレントレズナー、ジョン・バティステが映画音楽の作曲賞を受賞した。この作品はアニメ作品だが映画としても素晴らしい作品だ。
それにしてももうトレントがエレクトロニカのミュージシャンだということは忘れられたかも。
ちなみにトレントは「マンク」でもノミネートされてる
映画音楽の方に行ってよかったね(^^)
また主演男優賞はチャドウイックボーズマンの遺作となった「マ・レイニーのブラックボトム」でボーズマンが死後に受賞する史上3人目になるのではないか、という専らの下馬評だったが、最優秀主演男優賞はアントニーホプキンスと少し意外な結果で終わった。
案の定、ネットでは失望やこの受賞に対する異論等で炎上状態となった。
https://www.hollywoodreporter.com/news/oscars-criticized-chadwick-boseman-snub
こういうことは過去何回かあったのだが、これに対しての論評はさける
最後に地味な分野だが短編映画部門でTwo distance strangers"受賞した。これはよくあるのだがアカデミーが昨今の風潮を反映したもので、警官が一般の黒人男性を射殺したり暴行を加えることが日常茶飯事になっている今のアメリカ社会の現状を描いている。
日本ではこういう社会批判や政治に関する話題をエンタテインメントに入れることを極端に嫌う風潮がある。だから自民党政府がやりたい放題やっても日本人はおとなしくそれを受け入れるのだが、こういう社会のマイナス面を描くことも重要なことなのだ。今の日本人の体質としてそういうことを極端に嫌う傾向があるが、やはりそういう考えは改めるべきだあると考える。
どうもオスカーやグラミーのことを書くと今の日本の現状の愚痴にどうしてもなってしまうが、やはりエンタテインメントに関わる私としてそういう風潮を打破するための行動をひるまず続けていくしかないのかもしれない
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