「ボランテイア演奏」に関する勘違いと音楽家やクリエーターを人間扱いしていないこの国の風潮
<例によって長文注意>
まず告知だが一昨年の緊急入院を除いて毎年参加しているセプテンバーコンサート
例年は一回のみの参加だが今年は考えるところあって二回演奏します。
・ 9月11日 18;00開場 19;30開演 アートカフェフレンズ (30分ステージ)
・ 9月14日 18;00開場 19;30開演 下北沢 音倉 (20分ステージ)
これは昨今の安部政権の集団自衛権容認による事実上の憲法9条の骨抜きの状態で、69年間戦争をしなかったこの日本という国が実際に戦争に巻き込まれる可能性が出てきたことに対する危機感のためである。
過去8年間セプテンバーコンサートの参加で今年ほど強い危機感を感じながら参加したことはない。
この状況は一音楽家として音楽によるメッセージを発しないわけにはいかないと考えたために今年は二回に分けで参加する
セプテンバーコンサートは勿論、ボランテイアとしての参加である。
いうまでもなくこれは自主的な参加、私自身の音楽家として、人間としての信念を表明するために行っているものである。誰からも強制はされていない。
つまり本来ボランテイアは本人が自主的な意思ー主体的な意思を持って参加するもの であって、
決して他人や第三者がそれを強制したり、本人の意思に反する形で無理矢理参加させる、ということは絶対にあってはならないことである。
当たり前の話だ。
ところがその当たり前の話を理解できない、勘違いしている人間がこの国には少なくない。
たとえばイベント等でプロにボランテイアを要請が来てそれを断るとすると
「あなたにはボランテイア精神がないんですかっ? この地域に貢献しようとは思わないんですかっ?」
、とまるでボランテイア演奏をしないこちらをあたかも犯罪者呼ばわりするような輩がいる。実際私も複数回こういうことを経験した。
私の直接の知り合いではないが、実際こんなことを経験した演奏家がいる。
『ボランティア演奏』ということ
http://ameblo.jp/meg-harp/entry-11754655210.html
去年、こんなに世間が賑わっているシーズンにも、病院に入っていて遊びにも行けない方というのはたくさんいらっしゃるんだよなと思って、どこかの病院にボランティア演奏に行こうと思ったんです。
で、どこか演奏できそうな病院はあるかな?と思って調べてみたら、
『無料で演奏してくださる方を募集しています。プロに限ります。』
と書いてあるところがあって、一瞬で萎えた。
<中略>
、「タダでも演奏したいんです」という気持ちを「あ、うちプロ以外お断りなんでwww」って拒否るってどうなのよ。
そもそも、音楽家というのは労力に対しての収入が返ってくることは滅多にないので、やはり「無料」というのはとても厳しいものがあるのです。
<中略>
数年前にある病院にボランティアで演奏に行ったんです。
交通費が往復でガソリン代込みで1万円近くかかって行ったところだったのですが、
「是非弾いてください」
とのことだったので、時間もあったので行って来て演奏したんです。演奏終わって、そちらの院長先生とお話していたら、
「うちの家内は趣味でピアノをやってましてね、家にスタインウェイがあるんですよ」
とのこと。※スタインウェイ=1千万超のピアノ
この院長先生は趣味でそんな高いピアノ買う余裕があるのに、どうして1ヶ月の食費もままならない私はわざわざここに1万円も出して自分の演奏を提供しに来たんだろう、とすごく疑問に思いました。
この二つの話で呆れるのは、病院にしてもその「院長先生」とやらの医者にしても、「医療」という技術を売って医療費、診療報酬と患者から日常的に取っている人種である。つまり自分の技術はタダでは売らないが、音楽家の技術に対してはビタ一文払わないで平気な顔をしているということになる。
上記の例のようにスタインウエイのような高級ピアノを買う金がありながら、音楽家に対しては「当然ボランテイアで弾いてくれるよね?」などと当たり前のように要求する人間。上記のブログ主が怒るのも当然だし、もしその記事の口実に叩いているアホな人間がいたとしたら(いたとしてもどうせアホでヒマなネット住民だ)そちらの人間の方がはっきりいって頭がおかしい。なぜならこのような行為は
全く恥を知らない行為であると同時に音楽家を全く人間扱いしていない行為だ。
こんな人間がこの国には本当に多い。当ブログでも同じようなことを書いたが
プロ、クリエーターに無償(ギャラなし)で仕事依頼する風潮について
https://kyojiohno.cocolog-nifty.com/kyoji/2014/06/post-2ea1.html
この記事にも書いてあるが、プロに対してギャラを払いたくないために
あなたにはボランテイア精神がないんですかっ? 無償で貢献しようとは思わないんですかっ?
と音楽家やクリエーターに要求することは、
一流レストランのシェフに対して
あなたにはタダで料理しようとは思わないんですかっ?食べ物を無料で提供しようとは思わないんですかっ?
といって食い逃げを正当化する行為と全く同じである。
もしこの話を聞いて、食品という物品とクリエーターや演奏家の演奏といっしょに考えるのはおかしい、と考えた人がいたとしたら、あなたはプロのノウハウ、技術に対して何の価値や敬意も払っていない証拠だ、
形ないものはタダで提供するのが当然だと 思っている証拠だ、
今この国は日本のアニメ。ゲームを始めとするコンテンツ、料理、文化を世界に対して売り込もうという「クールジャパン」なる運動を経済産業省が旗振り役でやろうとしている。
これは日本の独特のノウハウや技術を世界に対して売ろうという企画である。
しかしノウハウや技術に対して全く価値を見出さない国が、自分たちのノウハウや技術を世界に対して売れるわけがない。
また「クールジャパン事務局」にもクリエーターにはタダ同然で働かせ、クリエーターにはピタ一文権利すら渡さず、官僚とその周囲だけでおいしいところだけ取ろう、などという無茶苦茶なことをやりかねない人間が少なくないのも事実。そこにはクリエーターを尊重し敬意を表す態度など微塵もない。
こんなことを平気でやってどの面下げてクールジャパンだ、といいたい
話がそれたが、
何度も云うようにボランテイア演奏、いや演奏だけではないが、ボランテイアというのはあくまで本人の自主的な意思によって行われるべきものである。
そういう人間に対してはイベントやその他の主宰者は当然ボランテイアをやる人に感謝の意を表明し、最低限のことー(せめて弁当とか交通費くらいは出すとかetc) を行ってボランテイアの善意に対して報いるのは人間として最低限の当然のマナーではあるまいか。何かそれが今忘れられているような気がする。
何かボランテイアをするのが当たり前だ、あるいはボランテイアを拒否するのは人でなしだ、などという「善意」をかさに来た暴力(といっていいだろう)行為が最近頻発しているような気がする。
人を人として見ていない、何かそんな人間がこの国に増えてはいないだろうか?
また上記のブログ主のように特に今日本という国は、演奏家、とりわけクラシックの演奏家が自分の演奏を発表できる場所は確かに少ない。
それをいいことにおもにクラシックの演奏家の足元見て「善意」をかさに来た暴力でボランテイアを強制する例が後を断たないわけだ。また結局それに負けて話に乗ってしまう演奏家が多い、という問題もある。
だがね、結局そういうボランテイア演奏を強制する連中は皆さんの演奏の価値なんか、ハナからわかってない。価値など最初から認めてない。だから平気でタダでやれといってくるわけだ。
どんなに皆さんが素晴らしい演奏をしてもこういう連中にはその価値など理解できるわけがない。はっきりいって豚に真珠だ。 そんな連中のために演奏してもあなたのためには絶対にならないしはっきりいって時間の無駄だ。そういう口車には決して乗ってはいけない:
来月私が参加するセプテンバーコンサート
この集団自衛権をかさに「今日本が戦争に巻き込まれるかもしれないんですよ。どうしてタダで演奏しようとは思わないんですか?」
などという輩がいないことを祈るが、もし万が一そんなことを平気でいう奴が出てきてもそんな話に乗ってはいけない
演奏家もクリエーターも自分の技術、ノウハウが命である。その価値を自ら貶める行為はしない方がいいと思う。
コメント
こんにちは、興味深く拝見させていただきました。
このままいくと、ボランティアする側が金を払わないといけなくなりそうです。
実際に、採用条件として初めはボランティアとして働くことを要求する企業が増えてるそうです。
楽天なんて、社長の著書を買うことが採用条件で、研修という名目でカード会員を集めるノルマがあるそうです。
下手したらボランティアする側が金を払う時代が来そうで怖いです。
最終的には事実上の徴兵制も
投稿: hoichi | 2015/04/26 19:27:04
それは事実でしょうか?
会社に対して「ボランテイア」でカード会員を集めるノルマを課し、三木谷氏の著書を強制的に買わされる。当然その間は費用もびた一文でない。
その辺のブラック企業よりひどいですね。それが事実だとすれば.,,,
まあIT系って変にもてはやされていますが、ブラック企業でないところの方が多いという噂は聞いたことがありますが、
私なら内定もらってもその会社には行かないですね(^^;)
投稿: Kyoji | 2015/04/27 11:56:24
日本人では、児童労働と人身売買を無くすのは不可能なのではないですかね?
日本人は、自分の都合のいいように物事を捻じ曲げますから、ボランティアの強制は、賃金を払ってないから、強制労働ではないという、とんでも理論が出てきそうな気がします。
日本人の他己犠牲精神は異常ですから、一度やると、恒常化する可能性のほうが大きいでしょう?
どういうことかというと、やる側(させられる側)にとっては、やればプラスになるのではなく、やらないとマイナスが発生することのほうが多そうですからね。
いや、既にそうなってるから、無賃で演奏の依頼ができるのかもしれませんね。
投稿: hoichi | 2018/08/20 16:10:35