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2018年6月17日 (日)

パルムドール受賞是枝監督の「公権力から距離を保つ」発言批判に見る日本社会の国家主義化と文化芸術のあり方の無理解にふれ

もう既にソーシャルネットその他で是枝裕和監督の「万引家族」のフランスカンヌ映画祭のグランプリにあたる「パルムドール受賞」に対して安倍政権がそれほど積極的に称賛していない(少なくともフィギュアスケートの羽生選手に対する「国民栄誉賞」などとくらべると明らかに態度が違う)というフランスの『フィガロ紙』の記事等が伝わっているので今さらという人すらいるのではないだろうか?

Hirokazu_koreeda_cannes_2015

■カンヌ受賞の是枝裕和監督を祝福しない安倍首相を、フランスの保守系有力紙が痛烈に批判
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%8C%E5%8F%97%E8%B3%9E%E3%81%AE%E6%98%AF%E6%9E%9D%E8%A3%95%E5%92%8C%E7%9B%A3%E7%9D%A3%E3%82%92%E7%A5%9D%E7%A6%8F%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E5%AE%89%E5%80%8D%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%82%92%E3%80%81%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AE%E4%BF%9D%E5%AE%88%E7%B3%BB%E6%9C%89%E5%8A%9B%E7%B4%99%E3%81%8C%E7%97%9B%E7%83%88%E3%81%AB%E6%89%B9%E5%88%A4/ar-AAy3v97

このような風潮に対し林大臣は「『万引き家族』がパルムドールを受賞したことは誠に喜ばしく、世界的にも高い評価を受けたことは誇らしい。来てもらえるかわからないが、是枝監督への呼びかけを私からしたい」と、回答。この政府が表明した「祝意」について、是枝監督はブログで

実は受賞直後からいくつかの団体や自治体から今回の受賞を顕彰したいのだが、という問い合わせを頂きました。有り難いのですが現在まで全てお断りさせて頂いております。

この発言に対し、いわゆる保守派論客からネトウヨ、安倍政権支持者等から一斉に批判が巻き起こったのは周知のとおり

その保守派、ネトウヨあたりから聞こえる批判を見てあまりのレベルの低さに呆れるのだが、やはり一向にこの騒ぎが収まらない様子なので当ブログでもひとこといわせていただく

まずもっとも多い批判

・「公権力とは距離を保つと言いながら助成金はもらうのか。それは筋が通らない」映画は「日本芸術文化振興会」という国から独立した独立行政法人による助成であり「公権力」に金を出してもらったという認識は誤り

まず文化芸術振興のための助成金があるのは事実だが、根本的な誤解としてこれは国の制度ではあるものの「政府」や「公権力」の金ではない

知らない人もいるが文化庁には「日本映画製作への支援に関する募集」を毎年行っており文化庁の厳密な審査の上で支援が決定される。さてここで支援を行うのは少なくとも形の上では「文部科学省」でも「文化庁」でもない。

独立行政法人「日本芸術文化振興会」である。もう一度いう、独立行政法人である。つまり国からは独立した一行政法人に過ぎない。

独立行政法人 日本芸術文化振興会

しかもこれから先が大事なところだが、日本芸術文化振興会は100%国の予算で運営されているわけではない。国の助成予算も相当数あるのは事実だが、それ以外に寄付金、国立劇場の入場料収入、広告収入等によって運営されている。

http://www.ntj.jac.go.jp/assets/files/about/document/yearbudget29.pdf

だからそもそも「日本芸術文化振興会」による助成金を受けたからと言って「公権力」から助成を受けたという認識はそもそも正しくない。

なのにあたかも林文部相や安部首相のポケットマネーから助成されたくせに、などといった勘違いコメントがあまりに多すぎる。日本人としての文化助成の権利であると「日本国の制度」を利用しているだけで、その制度を利用することと「現在の政権からの政治的アピールによる表彰」は全く別物なのだが、その差が理解できない人間が多いということだろう

第二の批判内容

・「国の制度を使ったのに公権力を批判するのはおかしい」「フランス政府が始めたカンヌ映画祭のパルムドールと文化庁からの助成金を返納しないと理屈が合わない」そもそも是枝監督は祝意を辞退するにあたっての理由を述べただけで国との対決姿勢を示したわけではない、「パルムドール受賞」で十分に助成金に見合う貢献をしている

最近の日本がおかしいと思うのは「権力に距離を置く」とか「権力に対する批判」をしただけで過剰反応する自称文化人、論客が非常に多いことだ。、

上記でものべたように是枝監督は祝意を辞退するにあたっての理由を述べただけであり、公権力との対決姿勢を打ち出した訳ではないし、そもそも助成金を貰ったら国におもねらなきゃいけない、なんて思考の方がおかしい。海外では助成を受けた受けないに関係なく表現の自由という観点から、社会、国、その他の者に対して批判的見解を入れることは寧ろ当然であるという認識の方が常識である。当たり前である。なぜなら文化であり芸術だからだ。

寧ろ独立行政法人の助成で制作した作品が、日本のパルムドール作品として世界に知れ渡った時点で、助成金分を超える成果貢献しているわけで、それだけで十分に助成金に見合う結果を出しているのだ。なぜ公権力に媚びる必要があるだろう?

国の助成金(くどいようだが直接は独立行政法人からの助成である)を受けたから国に媚びを売った作品にするのが当然だ、などという考え方自体が文化、芸術に対していかに無理解であるかということを自らの言動で証明しているのと同じである。

はっきりいってそんなこともわからん輩が文化人面してえらそうに発言する昨今の風潮の方がよっぽど危険である。(そしてそういう発言を礼賛するネトウヨ系、保守系も同様だ)

それでは是枝監督に対して批判をやめようとしない保守系論客に聞きたいのだが、もし次のような場合はあなただったらどうする?

奨学金をもらっている日大の学生がいたとして、監督の命令で危険なプレーを強制的にやったあとこの学生は日大の監督を批判して全ての真実を記者会見説明した。

あなたはこの場合「奨学金もらっているくせに監督にたてつくのか?」とこの学生を批判するだろうか?

日大に対するあれだけ批判がおきたがあの当事者の学生が仮に奨学金をもらう奨学生だったとしたらそれに対して学生を叩く自称文化人は結構いるだろうか?是枝監督への批判をやめようとしない保守系論客を見るとたぶん彼らの批判の矛先は日大ではなくその学生に向いたかもしれない、と思ってしまう。

「学校の制度」を利用しているのだから、なんでも学校のいうことに盲従するのが当然だ、というロジックを彼らなら摘要するだろう

最近の日本の風潮に少しでも権力にたいして批判する姿勢をしめすと過剰にその当事者を批判する動きが目立つ、ネトウヨの社会への悪影響もあるのだろうが日本の言論界にも国家主義的な風潮が蔓延していることに大きな危機感を覚える

何よりもここには「公権力=お上」という観点から政府が上の立場であって、国民はそれに従うのは当然だ、というロジックが見え隠れする。トップダウンで下の立場の人間が上に従順になるのは当たり前だ、そういうロジックで政治行政を行っているとしか思えない人物が少なくないし、それに迎合する「文化人」とか呼ばれる人種が最近急増している。

だがそれが民主主義=国民主権という基本理念とは真逆の考え方である、最近のネット論客、保守系論客や自称文化人を見るとこのロジックを決定的に理解していない部分を感じざるを得ない。

困ったことにそういう「国民主権」を無下に平気で否定する人物が政治家に少なくないのも事実で、とりわけ安倍政権になってとりわけその傾向が顕著になっている。日本は民主主義のはずであり、主権は国民にある。そのことを理解しない政治家、文化人、論客が多すぎる

それが文化芸術に対する無理解、とも相まって是枝監督に対する批判につながったという背景があると思う。あえていうが日本社会の文化芸術のレベルの低さをこの騒動は露呈してしまったといっていい。とても残念ではあるが..

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