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2017年10月 9日 (月)

オペレッタ"Miss シカゴ公爵"の日本初演の社会的意義、音楽史的意義について

以前もお知らせしたようにもう開催まで一か月になろうとしている「Missシカゴ公爵」の公演、現在編曲作業が鋭意進行中だが、私はこの作品に関わらせていただいたことはとても意義深いものとして考えている。正直ある種の使命感すら感じてこの作品に取り組んでいる

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単にジャズ、クラシック双方の語法が随所に散らばめられているため、ジャズ、クラシック双方に精通した人間でないと全体がまとめられない作品だから引き受けているのではなく、この作品の日本初演は大きくわけて2つの意味があると私は考えている。

1.現在の社会情勢、風潮に対する社会的意義

まずこの作品は国、民族を超えた愛と平和をテーマにしたオペレッタである。しかしこの作品が作曲された1920年代はヨーロッパには暗い影が忍び寄っていた時代である。このオペレッタは1927年に作曲されたがこのわずか4年後にドイツにナチス政権が誕生する。いわずとしれたドイツ第一主義、反ユダヤや異民族の排斥を基本主張としており、第二次大戦終結まで残虐非道の限りをつくしたドイツ国家社会主義党(NAZIS)

翻ってみて昨今の日本をみると、ネット、SNSでもヘイトスピーチがあふれている。ネトウヨが幅をきかせ、外国人に対する偏見、差別主義を拡散している。アメリカでもヴァージニア州シャーロットヴィルで白人至上主義者の運動で死者が出た例も記憶に新しい

これら差別主義が全世界的に広がっている点をみて、当然ながら歴史に一定の知識を持っている人間からすればあのナチスの暗い時代がオーバーラップするはずだ。

1931年の「ドイツ国家社会主義党=NAZIS」が政権を取ってからドイツじゅうに吹き荒れた差別主義、とりわけユダヤ人への差別が激しかった。
そんな中ハンガリーの作曲家でユダヤ系でもあるエメリッヒ・カールマン(写真ー1882-1953)の作品は当然ナチスの迫害の対象となった。

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この作品の内容をみてなぜヒトラーを始めナチスの支持者がこの作品を迫害したか、理由はよくわかる。これは当時ヨーロッパに大きく影響を与えつつあったジャズをはじめとするアメリカ文化と共に、東欧とドイツ民族の融和、友愛、どれもヒトラーやナチスにとって気に入らないものばかりだ。
これは「大ドイツ主義」をかかげるナチスドイツから「非ドイツ的で好ましからざる作品:というレッテルを貼られ、加えて人種差別主義者であるナチスからジャズを「黒人音楽」などということでことで激しく弾圧され1933年にナチスによって禁止リストにあげられ、歴史に名高い「ナチスの焚書」で焼却された.

日本でも図書館の本が何者によって破り捨てられたり、等「ナチスの焚書」を思わせるようなできごとも起きている。全世界的に排他的な民族主義、極右勢力の台頭がある時代だからこそ、、「Missシカゴ公爵」の日本初演は極めて意義があるものと考える。ヘイトスピーチ、民族排斥、民族主義に対する最大のアンチテーゼになるからである。この作品がナチスの迫害で長い間忘れ去られた作品である、ということは寧ろ名誉あることかもしれないのだ。

この作品が事実上「幻の作品」となった経緯、そしてこの作品の音楽的バックグラウンドを検証していく上で私はこの作品こそ昨今のヘイトスピーチが台頭する現代で演奏されなければならないオペレッタである、と感じた次第

2.20世紀の音楽の音楽史的意義

当ブログでご存じの方もいらっしゃるだろうが、私はこんな記事を書いている。

■間違いだらけの現代音楽史(1)ー1920年代は十二音技法もジャズも「最先端の音楽」だった

http://kyojiohno.cocolog-nifty.com/kyoji/2015/07/1920-4941.html

この記事は現在主に音大系でいまだ支配的になっている「西洋音楽(クラシック音楽)中心主義的史観」に対して異議を唱えた記事である。
つまり20世紀の新たな音楽の動きについては殆どの音楽史研究家はドビュッシーやラベルの印象主義に始まり、シェーンベルクを始めとする十二音技法をきっかけとした、新ウイーン楽派による無調主義が20世紀に勃興し、これはいまだに現在に至るまで今日のヨーロッパの伝統的エクリチュールを用いた現代音楽という音楽史観である。

しかしこの史観にはシェーンベルクの十二音技法とほぼ同時期に発展してまだ黎明期にすら入っていないジャズ、デイクシーランドを中心としたポピュラーミュージックの発展、ジャズやブルースから現在のロックの前身であるブギウギまでの発展の歴史、コードやドラムセットを中心としたリズムセクションの発展といった発展の経緯をほぼ完全に無視している。ポピュラーミュージックに対し、「大衆音楽」などという軽蔑的ニュアンスを持った言葉で語り、一部の音楽史研究家を除いて音楽史の流れの中でそれらの音楽をまともに扱うことはほぼなかったといっていい。

だが先程の記事にも記述しているが、シェーンベルクの十二音技法が現代の私たちの聴く音楽(「現代音楽」ではない)に大きな影響を及ぼしたなどと感じている人などまともな感覚の人間なら殆どいないであろう。一方でジャズ、ブルース等で使われている「コード」の概念は完全に現在のポピュラーミュージックを制作する上で欠かせない概念である。ロックは勿論のこと、最近のクラブミュージックやノイズ音響系にいたるまで、ラグタイム→ジャズ→ブギウギ→ロックといった音楽の影響と無縁でいられる音楽など殆ど存在しないといっていい。 つまりどちらの音楽がより後世に大きく影響を与えたのは火をみるよりも明らかなのに、いまだにポピュラーミュージックを含めた形で音楽史をきちんと語るということが殆ど行われていないというのは驚くべきことだ。

だが音楽史家の評価はともかく。1920年代に活動していた作曲家たちは少なくとも「西洋音楽(クラシック音楽)中心史観」とは一線を画す見解を持っていた。ガーシュインは云うに及ばず、「ボレロ」で明らかにジャズの影響をみせたラベル、そしてジャズ的なリズムを取り入れたバルトークなどが揚げられるが、このカールマンも当時としてはかなり大胆にジャズの語法を作品に取り入れている。
とりわけ「6 duet」などはハンガリーを思わせるメロデイ―の中に見事なほどブルース的要素が融合しているし、アリア「アメリカのご婦人たち」や「11メアリーのスローフォックス」などはジャズの影響だけでなく、メロデイ―ラインはブロードウエイミュージカルの原型といっていい形式をみることができる。

これらをガーシュインのラプソデイーインブルーと同時代、そして一般的にはミュージカルの先駆けといわれるガーシュインンの「ポギーー&ベス」よりなんと9年も早く作品として結実したことは驚きである。

これらを見てもこの「Missシカゴ公爵」が現代のミュージカルの先駆け的作品といって差し支えない。アリアだけでなく、演技あり、踊りありというエンタテインメント性抜群の作品だ。恥ずかしながら今回編曲の依頼をいただくまでこのオペレッタの作品の存在自体も知らなかった。しかし今はこの作品に出合うことができて幸福だったと考えている。

芸術性とエンタテインメント性を両立させる、というのはポピュラーミュージックでもクラシック音楽でも決して容易ではない。その意味で「Missシカゴ公爵」は稀有な存在であり、ナチスの迫害にあっていなければ今頃は喜歌劇でも代表的な作品として位置付けられただろうと思う。
なぜなら1920年代のジャズはシェーンベルクの十二音主義と同様、最新の音楽語法であったからである。今回この作品の編曲に携わらせていただいたのは、それを証明するいい機会だと思ったからである。

何よりもこの「Missシカゴ公爵」でも描かれているように20世紀は貴族社会から資本主義社会への変遷の時代でもある。貴族社会に支えられた西洋音楽に資本主義に支えられたポピュラーミュージックが音楽文化の面ストリートを歩くようになったのは時代の必然である。音大系の音楽史家が貴族社会をベースとした「西洋音楽の伝統」に固執し、当時台頭した資本主義のポピュラーミュージックの流れを徹底的に無視したのはいかに20世紀の音楽の流れを短絡的に見ているか、ということの証明でもある。

このヨーロッパですらまだ数えるほどの公演しか行われていない「Missシカゴ公爵」

この作品の上演の機会にあわせてDVDも制作する計画がある、クラウドファンデイングで資金を募っていますのでよろしければ..

愛と平和のオペレッタ!「Missシカゴ公爵」公演DVD制作プロジェクト(公開前)
https://camp-fire.jp/projects/view/46985?token=3gczyo4e

というわけで面白い作品ですので是非この機会に

〇公演詳細
2017年11月8日(水),9日(木)(各公演30分前開場)
虹組   8日14:00、9日18:30
夢組   8日19:00、9日14:00

場所:渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール 
東京都渋谷区桜丘町23-21 6階
全指定席  S席10,000円、A席7,000円、桟敷自由席5,000円

(虹組)オペレッタ 「Miss シカゴ公爵」 (11月8日14時公演)
https://ticketpay.jp/booking/?event_id=9247

(夢組)オペレッタ 「Miss シカゴ公爵」 (11月8日19時公演)
https://ticketpay.jp/booking/?event_id=9295

(夢組)オペレッタ 「Miss シカゴ公爵」 (11月9日14時公演)
https://ticketpay.jp/booking/?event_id=9296

(虹組)オペレッタ 「Miss シカゴ公爵」 (11月9日18時30分公演)
https://ticketpay.jp/booking/?event_id=9294

指揮・音楽監督 大浦智弘   
〇演出 今井伸昭

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〇キャスト <虹組> シルヴリア国王(シャーンドル・ボリス王子の父): 斎藤忠生 シャーンドル・ボリス(シルヴァリア王子):高畠伸吾 ローゼマリー(モレニアの王女):栗林 瑛利子 メアリー・ロイド:佐藤智恵 ボンディ(ロイド氏の秘書):吉田敦 ぺローリン侯爵(シルヴァリアの国務大臣): 浅山裕志  ボヤツォヴィッチ伯爵(シルヴァリアの財務大臣):品田 広希 「グリル・アメリケーヌ」支配人:野口 大輔 ジプシーの楽士長:Yui ベンジャミン・ロイド(メアリーの父、シカゴの大富豪):山下直 <夢組> シルヴリア国王(シャーンドル・ボリス王子の父):西義一 シャーンドル・ボリス(シルヴァリア王子): 倉石真 ローゼマリー(モレニアの王女):今野絵理香 メアリー・ロイド:森裕美子 ボンディ(ロイド氏の秘書):大石洋史 ぺローリン侯爵(シルヴァリアの国務大臣):大石将史 ボヤツォヴィッチ伯爵(シルヴァリアの財務大臣):志摩大喜 「グリル・アメリケーヌ」支配人:中村憲司 ジプシーの楽士長:星野沙織  ベンジャミン・ロイド(メアリーの父、シカゴの大富豪):山下直 〇ゲスト出演 メアリーの母:ゲストあべ静江(8日2公演)<挿入歌 みずいろの手紙>
如月愛梨(9日2公演) 「変てこクラブ」メンバー アスター  関根かおる  カーネギー  織田彩耶子 フォード  神谷 優香 ロックフェラー  西 綾夏 ダンサー:宇田川路代、田中麻衣子 合唱・ダンサー Musica Celeste合唱団・テアトルアカデミー 【舞台上ビックバンド】 トランペット:林 沙希 コントバラス:新井優香 ドラムス:吉島智仁  【アンサンブルオーケストラ】 ヴァイオリン: 小山 啓久  ピアノ: 村田千晶  エレクトーン: 福澤 香  プロデューサー: 佐藤智恵 舞台監督・舞台美術:礒田ヒロシ   照明:磯野 眞也((有)アイズ)  編曲:      大野恭史 音響:       五十嵐優(Sound Scape) 振付:      宇田川路代  ステージング: 影山 慎二  訳詩・台本: 吉井淳    広報デザイン: マーブルデザイン  稽古ピアニスト:富永有里乃、樋口めぐみ、山田麻美子  制作:   株式会社ムジカ・チェレステ

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