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2014年9月30日 (火)

日本だけCD好調はおかしいという「デジタル絶対論」とアナログレコード復活の現象ーシステム論の観点のみからの短絡的な音楽業界論を批判する

(例によって長文注意)

ここ二週間ほど私ごとでドタバタしてしまい、きちんとしたブログ更新ができなかった。

まずこの点から誤解されそうなのでお断りをしていくが私のいう「音楽業界」とは別にレコード会社や大手製作会社等を念頭にいれているわけではない。正直私にとってもはやレコード会社とかMPA(音制連)系の会社などどうでもいい。

私のいう「音楽業界」とは単純に音楽の仕事をしている人間で、当然そこにはインデイーズ系や、私のような個人商店型音楽制作者、小さなレーベル等も含む。

それを前提として「音楽業界」の現状に関して当ブログでいろいろ述べているわけだが、最近ネットで「世界で唯一CDがまだ売れている日本の音楽市場の不可思議」についてかまびすしいほど論じられている。

きっかけはNYタイムスのこの記事だが

CD-Loving Japan Resists Move to Online Music
http://www.nytimes.com/2014/09/17/business/media/cd-loving-japan-resists-move-to-digital-music-.html?_r=3&utm_content=buffer24a4f&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=CDBbuffer

英語が苦手な方のために記事のだいたいの内容を要約すると

(1) 日本の音楽業界のデジタル音楽に対する保守的な背景がCDの売り上げの比率を高くさせている。そのためSpotifyを始めとするデジタルの新サービスがいまだ開始できるメドがたっていない。しかし世界第二位の市場の日本がデジタル音楽に対してこのまま消極的な態度を取り続けるのは世界市場全体にも悪影響を及ぼすことが懸念される。

(2)  日本人には「コレクター志向」が欧米より強く、またAKBに見られる関連プレミアム品との抱き合わせ商法もいまだCDがメインになっている原因である。

とまあやや乱暴にまとめるとこの二点になる。これに関してさまざまな方面から反論やおとなる分析も出ているが、私はこういう日本市場の分析を見ると「またか」と思ってしまうのだ。

はっきりいってNYタイムスとあろうものが実にできの悪い記事を書くと思ってしまう、そもそもCD等のパッケージはもはや過去の無用の長物であるという大前提から論じていること自体、そしてあたかも「これからの音楽はデジタルしかありえない」といわんばかりの「デジタル音楽絶対論」自体、昨今の音楽市場の動向をきちんと把握していない証拠である。なぜなら当ブログでも論じたがアナログレコード復活というものが、日本ではなく欧米ーとりわけアメリカ国内で起こっているからである。

ネット内の記事に得てしてありがちだが、音楽やコンテンツの内容、及びそれ以外の広い市場に対する視野をもたず、デジタル音楽論やシステム論のみから昨今の音楽ビジネスを語る記事が多過ぎる。それらの記事はある意味「デジタル万能論」にとりつかれており、非常に視野の狭い短絡的な論調になりがちであるNYタイムスのこの記事はIT系の記者、短絡的なマーケット分析しかできない人間が音楽業界を分析するとこういう記事になるというまさにお手本のような記事である。

勿論この記事の分析の全てが間違っているわけではない。日本のレコード会社の護送船団体質を始め、デジタル音楽に対する不寛容な体質は間違いなく根強くあるし、それが海外ではもはや当たり前となっているSpotifyPandoraのサービス開始のメドすら立たない状況を作っているのは間違いない。そこの部分に関しては正しい。

だがNYタイムスの記事の記者はアナログレコードの昨今の状況に対してはおそらく知らないだろうと思われる。

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アナログがここ5年で3倍の600万枚の売上げ、という現象、

これは日本で起きているわけではない。アメリカから発祥したRecord Store Dayをきっかけにアナログの音質を見直す動きが出てきおり、それが上記のグラフのような現象を生み出している。
よく誤解する人がいるが、これは懐古趣味でこういう動きが出ているわけではない。

音楽愛好家がよりよい音で音楽を楽しみたい、という欲求からでありCDデジタルのような平べったい音ではなく、アナログにしか出せない深みのある音を楽しみたい人が増えているためである。NYタイムスの記事で「コレクター志向が強い日本人」などと論じているが、アメリカでもヨーロッパでも好きなアーチストの「音楽を所有する」実感をより強く持ちたいという欲求は強いからこういう動きが出てきた。そしてそういう欲求は音楽を愛する野であれば当然の欲求である。

この現象を音楽ビジネスをデジタル音楽論やシステム論の観点から見るこができない人は決して理解できまい。音楽デジタルサービスがストリーミングを含めどんなに出てこようが結局世界の音楽の愛好家は「よい環境で音楽を聴きたい」という欲求はどこの国でも変わらないのだ。もっというと音楽のデジタル化なんていうものは単に手段でしかない。それにファイルのみで何もないデジタル音楽には「所有する」という実感を持つことはできない。それを考えると音楽のデジタル時代にフィジカルパッケージはもはや無用の長物であると断じること自体、音楽愛好家の真の気持ちを理解していない証拠だといっていい。

勿論600万枚というのはまだまだ音楽の売り上げ全体から見ればちっぱけな数字だ。それに最終的にアナログがどこまで伸びるのか、というのはわからない。しかしこれをもってアナログが再びデジタルを凌駕するなどという分析も早計だ。希望としては最低この倍くらいまでは伸びてほしいと思っているが,,,

ひとことでいえばアナログとデジタルの共存が始まりつつある、という見方の方が正しいのではないだろうか?アナログ、デジタルを二者択一というものの見方自体が寧ろ時代遅れになるかもしれない

ちなみに「デジタル音楽万能論」を唱えているアメリカの記者はこの事実をご存じなのだろうか?

■アメリカの音楽売上、5%ダウン。ストリーミング成長も減少止まらず。迎え始めた「第2」のシフト
http://blogos.com/article/95469/

予想通りSpotifyPandoraのストリーミングは急成長しているものの、音楽配信は落ち込んでおり、ストリーミングの伸びは音楽配信の落ち込みを補完していない。そうした中でのアナログレコードの急成長。

これらのことで何がいえるか。私なりの考えをまとめると

・ 音楽市場は両極化する。つまり音楽を本当に心から愛するユーザーとそうでないユーザーとはっきりわかれる。前者はアナログレコード含むフィジカルパッケージを購入し「音楽に対する所有欲」を持っており、後者の人たちは単にストリーミングで音楽を聴くのみで「音楽を所有しよう」とは思わない人たち

・LPを含むフィジカルパッケージもデジタル音楽も共存し、ユーザー、消費者のタイプによって購入するものが違ってくる。つまり音楽の多くの商品形態がそれぞれ共存し、どれもなくなるということはない

・ さらにもっとも大事なこととして、アーチストは生き残るために今まで以上に音楽のクオリティを高くする必要があるということ。コアな音楽ファンを作るためにはそれは必須である。

フィジカルパッケージは無用で音楽配信やストリーミングのみだ、とかアナログでなければデジタルだ、などという二者択一、白でなければ黒だ、という短絡した議論ではなく、これからさまざまな商品形態がユーザーマーケットによって変わってくるということだろうと思う。

上記のNYタイムスの記事、フィジカルCDでなければデジタル音楽しかない、などという論調で音楽を語ると視野の狭い、短絡的な議論になってしまう。そうではなく最終的に音楽の中身、人を惹きつける音楽なのか、魅力的な音楽なのか、それが最も重要である。繰り返すがデジタルだ、ストリーミングだ、フィジカルパッケージ云々は単なる手段に過ぎす、システム論だけで音楽のありかたを論じると的はずれな議論になる。


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