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2012年7月21日 (土)

音楽業界の新たなビジネスモデル、システムの必要性について(例によって長文です)

興味深い記事を目にしたのでこちらで引用させていただく

■音楽業界には新たなエコシステムが必要
http://drillspin.com/articles/view/122

上記の記事をひとことで説明すると音楽業界における新たなビジネスモデルを模索し、ネットプロモーションをはじめとする新たなシステムを構築することに活路を見出すべきだ。という内容の記事である。

当ブログでは音楽業界の従来のビジネスモデルが実質的に崩壊し、業界のシステム自体を根本的に見直し新たなシステムを構築させる必要性を繰り返し論じてきた。だから上記の記事の基本的主旨は私は大きく賛同するものである。

また上記の記事は「レコード会社の宣伝担当」の方が書いていると聞いて、あくまで過去のビジネスモデルにこだわり、業界の旧態依然として体質に愛想がつきていた私を大いに驚かした。ようやくこういう人材をレコード会社は採用するようになったか、とも思ったが、よく考えると「ちょっと待てよ?」とも思ったのである。 というのもいくら背に腹を変えられない状態にレコード会社がなり、この方のようにMBAをこれから取ろうとする人間を採用したにしてもこの人の主張内容が「あまりに平均的音楽業界人の見解からかけ離れた」ものだったからである。主張内容をよく見るとむしろ津田大介氏の見解に極めて近い。ということで調べさせていただいたが普段は大阪におられることと、どこのレコード会社かは調べても不明だったのでたぶんいわゆるメジャー系ではないだろう、と推察する。

私のブログを読んでくださった方ならおわかりだと思うが、実は私もネットプロモーションをはじめとするあらゆることを試行錯誤してきた人間である。但しここで何回も書いているが私はやはりプロモーターには向いておらず、基本的に制作屋なのでこれ以上このプロモーションの分野に深入りしようとは思っていない。但し音楽文化が今世紀末でも文化としてあり続けるために音楽業界のシステムを根本的に変えるパラダイム自体を変えなければならない、という見解は今も変わっておらず、私は今後プロモーターではなく制作屋の方面から少しでも後世の音楽文化のために仕事ができれば、と考えている。

さて、以上を踏まえながら僭越ながら上記の記事に関して私なりの考えを述べさせていただく

昨今の音楽業界を取り巻く環境の変化には目を見張るものがあります。新たなパラダイムを迎えこれまでのビジネスモデルが通用しなくなり、多くの課題を抱えているのが現状です。その中でも最も解決すべき問題なのは、アーティストが音楽活動だけで生活できるほどの収入が得られない」ということです。この事は近い将来日本の音楽業界にとって非常に大きなリスクになります。この問題の解決のためにはCD販売、音楽配信のビジネスだけでなく、アーティストの権利収入を含めたいわゆる360°ビジネス、さらには新たなビジネスモデルの構築により事業を多角化することで、収益を向上させることが必要になってきます。ただしここにも大きな課題があります。今は情報の流通やその影響力、“体験の共有”という音楽に対するニーズが変わり新たなパラダイムを迎えています。音楽業界の課題解決、改善のためにはITとの密な連携が必要であり、そしてアーティストが十分な収入を得られるためにも、新たなエコシステムの構築が必要に なってきます

ここの部分は大いに賛同する。「近い将来日本の音楽業界にとって非常に大きなリスクになります。」と書いているがすでにかなり大きなリスクとなり業界の存続すら危ぶまれている状態である。「アーティストの権利収入を含めたいわゆる360°ビジネス、さらには新たなビジネスモデルの構築により事業を多角化することで、収益を向上させることが必要になってきます。」も全く同感だが、今の音楽業界はここの部分の改革すら渋っている。とにかくちょっとでも新しいことをしようとすると信じられないほどの抵抗を示す業界である。

さてもう一つ注目したいのが中堅アーティストに有望な新人アーティストの活動休止や解散についてです。こちら(http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/entertainment/j_rock_and_pops/wiki_header/?hn=6)に2012年と2011年の活動休止・解散と再デビューのアーティスト数がまとまっています。発表されている全てのアーティストが記載されているデータではないかもしれませんが、2012年は東京事変レミオロメンCHEMISTRYGO!GO!7188School Food Punishmentなど有名・有望な新人アーティストの解散や解散の予定が発表されています。そしてプリンセス プリンセスの期間限定再結成、コブクロの 活動再開など大物アーティストの復帰も記憶に新しいところです。活動休止、解散には音楽の方向性や事務所との方針など様々な事情が考えられますが、やはり 資金的な問題が大きいのではないでしょうか。ここはあまり深堀しませんがアーティストが成長し規模が大きくなるにつれより多くの資金も必要になります。音 源販売のビジネスモデルが行き詰っている現在では予算をかけても果たして回収できるのか、利益が生み出せるのか非常に難しい状況です。

これも全くその通り。なぜ「資金が足りなくなるか」というと音楽業界のプロモーション方法はバブル時代から本質的に何も変わっておらず、変えようとすらしていないだからそもそも地上波テレビのタイアップというプロモーションメソードがすでに必要経費の額からしても費用対効果の面でも実質的に破たんしている、にもかかわらず業界自体は「他に有効な手段がない」との理由で全くこのプロモーションメソードを変えようとしていない。

実はこの地上波テレビとのタイアップというのは世界的に見ても異常な状態をもたらしている。普通日本以外の世界でCMやドラマ、映画などで音楽が使用される場合はライセンス使用料がアーチスト側に支払われるのが普通なのだが、日本は全く逆なのだ。今や「ドラマや映画の主題歌」に採用されるためにレコード会社や音楽事務所が協賛金という名の莫大な広告料を支払っているのだ。(しかもこの金額は年々上がっている) 当然ながらこの場合ライセンス料は勿論のこと、著作権使用料も「プロモーション目的」という項目JASRAC例外事項として認められるためアーチスト側にも作曲家にもビタ一文の費用が支払われない。このようなことをJASRACのような権利信託機関の公認のもとに当たり前のように行っている国は私の知る限り日本しかない。これに対しアメリカを初め海外ではメデイアの発達に伴いこうしたアーチストのライセンス使用料はいわゆるインデイースアーチストですら重要な収入源となっている。日本のアーチストや作曲家が「食えなくなる」状況を作っているのはこの地上波のタイアップの弊害も小さくない。

テクノロジーの進化により今は手軽にコンテンツの制作、発信、共有が行えるようになりました。そしてニコニコ動画という自由に“体験の共有”が行える場も生まれています。さらにニコニコ動画の新サービス NicoSoundGumroadなどユーザー同士が直接コンテンツを売買するサービスも登場しました。もしアーティストがこのようなサービスを提供する方へ大きくシフトすれば、新たな文化が成長する一方で、今後音楽業界から有望なアーティストの輩出がさらに減っていくことが考えられます。

つまり衰退期に入っているビジネスモデルへの依存、さらには権利による囲い込みは現在の音楽に対するニーズに合わないため、アーティストのブランディングと収益には結びつかず負のサイクルを生んでいます。そして自由に“体験の共有”ができる、音楽やコミュニケーションを楽しむことができる場やサービスにユーザーはシフトしています。共感による新たな文化が成長する一方で、「アーティストが十分な収益を得られない」という問題を解決できなければ、有望なアーティストの輩出はさらに減り音楽業界は衰退し続けていくでしょう。

情報化社会でも成功の1つのキーワードとして「共有」が重要な位置を占めるという認識は正しい。制作屋の立場から考えると音楽、サウンドによる全く新たなビジネスモデルーそれはCDがダメなら音楽配信だ、などという類の記事ではなく音楽、サウンドコンテンツの全く新しいありかたを模索する必要性もあると考えている。私が昨年からNHKのEテレでやろうとしていたことも、その一環である。しかし同時にこれは「プロの」アーチストのあり方とバッテイングする可能性も考えられる。そこの部分について考えるのが私制作屋の立場からして重要だと考える。

さて、ここまでは大いに賛同する。しかし次のセクションでは少々苦言を呈させていただく

ブランディングが重要なのは先ほど述べた通りです。これからはサービス提供者側のマネタイズだけでなく、アーティストのブランドを作りマネタイズの問題を解決するための仕組みが必要です。そのためにはコンテンツを解放しITとの密な連携が必要不可欠です。ただコンテンツを提供するだけでなくアーティスト自身が積極的にサービスを活用する事も大事でしょう。さらにプレイリストの共有、同期・非同期での共有だけでなく、コンサート情報を一元化する SongkickのようなO2Oの領域はこれから大きく成長していくと思います。

まずブランデイング「コンテンツ解放」はネットプロモーションを実際にやった経験でいうと実は全く相反する行為なのだ。ブランデイングとは「価値を高める」ことであり、「コンテンツ解放」とはその逆で「コンテンツを安価=無料とまでじゃいかなくとも限りなく無料に近くする行為」であり、両者は全く逆のベクトルであることは小学生でもわかるであろう。インターネットは確かに便利で有用なツールではあるが世界中をフラットにする傾向があり、それは価値を上げるどころか価値を下げる方向にベクトルを動かしやすい。単に「コンテンツ解放」するだけではアーチストをブランデイングするどころか、寧ろタダ同然の消費財に貶める危険性がある。ここの手順を間違えると取り返しのつかないことになるのだ。

この辺りの論調は津田氏あたりがよくいっていることだがインターネットというのは万能ツールでは決してないのだから、「コンテンツ解放」をはじめとするネットプロモーションの手順を間違えるとかえって意図したものとは逆の結果になってしまう。インターネット、ITはもろ刃の刃であることも忘れてはならない。

また「コンテンツ解放」といってもアーチストの「全てのコンテンツ」を解放する必要はない。まあいわゆる「シングルカット」的な曲はもともとアーチストの宣伝目的という伝統的な位置づけで考えていいだろうから、その場合は音楽配信だけでなく「コンテンツ解放」で無料とまでいかなくとも無料に限りなく近くするリスクを負った上でプロモーションすればいいが、他のコンテンツに関しては「あえて公開しない」部分も必要である。ただ「広める」だけではブランデイングにはならないのである。ネットを使う場合はその辺りのメリハリが必要で、その意味で音楽の権利のコントロールを100%手放してしまうは極めて危険な行為である。コンテンツビジネスはあくまで権利ビジネスである、という基本を忘れてはならない。

ソーシャルネットでもそうだがなんでもかんでも「自分のコンテンツを解放」することがよいとは限らない、いまだにITギーグ系ではそういう論調が強いが、私自身それをやってmixiでずいぶん嫌な思いもしたし、FBでは現在自分のコンテンツ公開を制限することによってかえって快適なソーシャルネット環境を作っている。

なんでもかんでも公開がいい、情報のコントロールを100%捨て去ることがよいと考えているふしが上記の記事で見えるが、やはりそこは慎重にことを運ぶ必要がある。ネットは何度もいうが万能ツールではなくもろ刃の刃であるのだ。

以上の3つのポイントから「アーティストが十分な収益を得られない」という問題を解決し音楽業界の活性・発展のためには、様々なITサービスだけでなくオフィシャルのファンコミュニティなども含めたエコシステムの構築が必要であると言えます。そして新たなパラダイムを迎えている現在はコンテンツを100%コントロールしようとはせずに解放する事が大切です。それこそがユーザーの“体験の共有”を生み、ニッチ化していくコンテンツビジネスにおいてブランディ ングに大きく貢献します。アーティスト・レーベルがフラットな立場でITサービスとユーザーに向き合うことで、音楽ビジネスに対する様々なニーズを見つけていくことができると思います。そしてそれは多くの市場機会を生み出すでしょう。そうすれば音楽スタートアップの参入にもつながり、ユーザーは利便性の向 上や新たな音楽体験を得ることができ、アーティスト・レーベルにとってはブランディングと収益につながりそれぞれが恩恵を受けることができるはずです。マスを獲得していた時代と比べて業界の規模は小さくなるかもしれません。ただし業界の負のサイクルを断ち切ることで、多様性による新たな音楽の楽しみ方と新 たな文化の誕生といった可能性に満ちた正のサイクルを回すことができるのではないでしょうか。

ファンサイト、コミュニテイの構築は大いに賛同するが「コンテンツ解放」についての考えは上記に書いたとおりである。

さて私は津田大介氏の見解を初めこの手の「こうすればネットでアーチストのプロモーションは成功するはずだ」という類の話を今までいやというほど聞いてきたし、率直に言ってそれに期待し失望もさせられてきた経験がある。そういう人間からひとこといわせてもらえれば、「それならそのやりかたで具体的な成功例を1つ作ってみたら?」といいたい。もう正直いってこういうネットを使ったプロモーションの「こうすれば成功するはずだ」という能書きを聞くのはもう飽きた。たいていの場合実際の音楽のプロモーションの現場など経験したこともない輩が書いていることが多い。(困ったことにネットではこの手の「成功例」だけが一人歩きし、逆にその数十倍ある失敗例はネットではほとんど広まらない

上記の記事の伊藤氏はどこのレコード会社の方かわからないが、実際に宣伝プロモーションを担当されているようなので、それなら具体的に「コンテンツを100%解放」した場合の成功例を具体的に実現して見せていただきたいと思う。それも津田氏の書いているような「無料化による成功例」「たまたま成功した例」ではなく、誰もが同じようなことをやっても成功できる全く新しいメソードの成功例をぜひ見せてほしいものである。

それが実際に本当に実現できたら上記の主張が正しいことを私は認めよう。それまでは絵に描いた餅以上でも以下でもない。

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