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2010年12月26日 (日)

新しい音楽プロモーション考の大半は「神話」であり「絵に描いたモチ」である

昨日うちの奥津恵の今年最後のライブが終了した。実は奥津のプロジェクトを始めるときに従来のメジャー的なプロモーション方法ではない方法で、アーチストのインキュベーションを行なってみようと考えスタートしてみた。

いわゆるロングテールな視点でインキュベーションができないかという仮説であり具体的には以下の内容になる

1. CDが売れなくなったら、ライブで稼げばいい

2. インターネットで音源を自由に聞かせるようにすれば自然に売れるようになる。

3. ブログやSNSを使用してファン層を広げることができる。

勿論従来の「タイアップ」等の古典的なプロモーション方法を完全に放棄していたわけではないが(実際5-6回ほどCM等のタイアップのコンペに参加しているー2-3回程最終選考に残ったことがあるが結果的にNGだった)、上記の3つの観点を中心に私なりにさまざまな「実験」をやってみた。

結論からいおう。少なくとも上記3つのみインキュベーションを行なうことはほぼ不可能である。twitterやSNSを見ていると上記3つの方法さえやればアーチストはやっていけるはずだ、などという言質がいまだに多いが実際にやってみればいかにそれが非現実的な方法であるかがわかる。

まず1.CDが売れなくなったら、ライブで稼げばいい」 という観点、先日NHKラジオに出演した時にも視聴者からそういう意見が出たが、マドンナのように黙ってても武道館クラスの会場を満員にできる超ビッグアーチストならともかく、その辺のインデイースのアーチストがたとえ一年365日全部にライブをしたとしてもたぶんアーチストがそれで食っていくのはほぼ不可能であろう。現場経験から実際にどういうものか説明しよう。

まず「ライブでCDがどんどん売れる」というのは幻想だ。いや、確かにCDは売れる、但しそんな100枚、200枚もライブで、しかも毎回売れるわけではない。うちの奥津が一回のライブで一番売った枚数は14枚、 あるインデイースアーチストで50枚売ったという話を聞いたことがあるがそれは寧ろ例外である。たいていの場合ライフハウスクラスでは売れてもせいぜい数枚程度である。それもライフハウスのノルマを達成した上での話しで、仮にノルマを上回る動員数があったとしてもチャージバックなんて微々たるものだから、それで「食っていく」レベルには到底届かない。何よりもノルマを達成しなければ例えCDが売れても赤字になってしまうのだ。そして年300回以上ライブをしたところで(これ自体かなり非現実的だーやっているバンドもあったようだが毎年こんなに体力が続くはずがない)300回全部にノルマを達成するなど、よほどコア層が多数いるアーチストでないと不可能だ。また仮にそれが達成できたにせよ、諸経費等を考えればそれで「食っていく」レベルまで稼ぐのは極めて難しい。紙の上では可能であるように思う人がいるかもしれないが現実はこうである。

但し
「ライブで稼ぐ」ことはできなくてもそれを通じて「コア層」を育てることは可能である。但しこれは全ての音楽ジャンルで可能というわけではない。もともとロックでいえばHM(ヘビーメタル) パンク クラブ系でいえば音響系(ノイズ系含む) ゴアトランス、ドラムエンドベース、アンビエント等々元々コアのファンで成り立っている音楽ジャンル、そしてアキバ系などは「コア層」を育てるのに非常に向いているジャンルである。これらに関しては「コア層」のファンを蓄積が比較的容易だしCDも売りやすい。

次の
「2. インターネットで音源を自由に聞かせるようにすれば自然に売れるようになる。」についてはもうこのブログで何回も書いたので改めて書く必要はないだろう。「ネットでコピーし放題にさせればプロモーションになる」というのは実は大嘘である。昔は私もそう思っていた時期があり、実際にそれをやってみたが結果は惨憺たるものだった。

実はネットユーザーの殆どは「タダだから聴く、タダだから見る」というユーザーであり、少しでも「有料」である部分を見せただけで9割のユーザーがその瞬間に退いてしまう。これは何回もいろんなことを試してみたがほぼ全てのケースで真実であり実感として感じたことである。この件は既に何回も述べたのでこれ以上は語らない。9割以上の人は「あ、タダでダウンロードできた、ラッキー♪」以上には考えないのである。認めたくない人もいるだろうがそれが現実である。

そして3. ブログやSNSを使用してファン層を広げることができる。」

これに関してはアメリカ、カナダ等では成功例がある。オバマ現アメリカ大統領などは無名の政治家だったのが「草の根」から大統領になった例だし、このブログでも書いたがYour Favorite Enemies のように従来のメジャー的なプロモーションによらずにBillboardチャートにランクインした例もある。

しかし日本でこれで可能かどうかについては別問題である。結論からいって日本のネット事情を見るにつけこれと同じことが日本で起きると期待するのは極めて非現実的である。それは日本のネットの言説が実質的に社会的マイノリテイによって支配されているという現実がある。(詳細は http://d.hatena.ne.jp/KyojiOhno/20101123/1290501330 をご覧下さい。)

勿論、中川淳一郎さんのいうウェブのバカと暇人 が多いのは何も日本だけの事情ではないが、(アメリカも負けず劣らずひどい) ただしアメリカでは日本のようにウエブ論壇が固定していないし、健全的で賢い人たちが集まるサイトも存在するため、アメリカでは「草の根」ツールとして機能している面もある。しかし残念ながら日本のネット事情はそこまで成長していないのが現実だ。賢い人分別のある人の影響力が日本では少なく、社会的マイノリテイによってウエブの言説が支配されているという意味で極めて不健全である。梅田望夫氏の「日本のウエブに失望した」発言はこうした状況を見た上での発言である。

従ってこれも「少なくとも日本では」非現実的といわざるを得ない。

つまり私が数年前に論じた「ロングテールな」観点からのアーチストインキュベーションの挑戦事実上敗北に終わったと認めざるを得ないのだ。

ということで来年から奥津恵のプロモーション方針を根本的に戦略を見直します。今さらですがITだけで革命なんて起きないですね。少なくても日本においては

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