文化庁への意見書公開
先日の当ブログの2月24日の記事にて現在文化庁が検討しているブルーレイディスクの政令指定に関するパブリックコメントを送付するように皆さんにお願いしました。
お願いした以上、私自身も送信しないわけにいきませんので呼びかけをした責任もあり、私の場合の文化庁に対する意見をあえてこのブログにて公開させていただきます。勿論特に一部のネットユーザーとは著しく意見を異にすることは承知の上ですが、これからの文化を守る上でも必要と考えました。
以下に公開します。
*************以下文化庁に対する意見書**********************
著作権法施行令の一部を改正する政令案に関する意見
1.法人
2.氏名 有限会社ハイブリッドミュージック
3.住所 〒206-0013 多摩市桜ヶ丘1-38-5
4.連絡先 xxx-xxx-xxx5 FAX (xxx) xxx-xxx9
5.御意見
弊社は音楽制作会社であり音楽出版社でもあります。コンテンツの制作現場の立場から今回の意見を表明させていただきます。まず、コンテンツビジネスというのは権利のビジネスであり、知財―知的財産―のビジネスであります。コンテンツは知財ということを大前提としてなぜ「録音による補償金」というものが必要なのか、をご説明させていただきます。なぜならとこの点が大変な誤解をされているように思うからです。ユーザーの方の多くが「なぜ自分の好きでない音楽の分まで払わなければならないのか?」という風にお考えのようですが、気持ちはわからないではないですが、それはものごとの表面的な部分しか見ていないと思います。
まず大前提としてメデイアに録画、録音するという行為は映像や音楽という「コンテンツ」という知財をコピーするという行為であり、これはコンテンツの中身がいかなるものであっても「個人使用」として世間一般の方が家電を使って著作者の許可なくコピーする行為であり、本来は「個人使用」する場合に権利者に支払われるべき対価がある工程で「支払われなくなる」という事態が発生することになります。ブルーレイに関して今行わようとしている改正は「個人使用」に際して本来は「支払われるべき」対価に対して権利者に対して目をつぶりなさい、といっているに等しい改正です。 勿論ユーザーの方がJASRACなり何なりに「個人使用でコピーした」という報告をしていただければいいですが、現実問題として個人使用のレベルで誰かどの曲をどれくらいコピーした、などと把握することなど不可能です。そのためにハードから一定率の金額を回収した金額を権利者に公正に分配する、という方法しか現実的にありません。
メーカーの方には補償金を「個人使用」の権利の侵害であるかのようにお考えの方が多いようですが、そういう方にお聞きしたいのは、もしハードの特許や実用新案を全く誰かが「個人使用」という目的で無許可でメーカーの特許や実用新案の技術を無断で使用された場合、「個人使用」に際して本来は「支払われるべき」対価に対してメーカーとして目をつぶりますか? 万が一その無許可で特許や実用新案を使った技術で、誰かが大もうけしてそれで特許料等の知財に関する費用をびた一文払いません、といわれたら「ああそうですか」といって引っ込みますか?
特許もコンテンツの権利も細かいシステムは違いますが基本的には同じです。私は危惧するのはデジタル時代でコピーが簡単になったため、知的財産や知的所有権に関する意識、それを尊重する風土が年々低下している点であります。某大手IT企業の代表で「全てのコンテンツは無料であるべき」などといってはばからない人物もいる始末です。しかし「無料」というのは価値がない、ということであり、音楽や映像のコピーに対する対価を支払うのを拒否するのは音楽や映像の文化の価値自体を認めないといっているに等しく、このような態度は日本の音楽文化、映像文化を滅してしまいます。あえていいましょう。「全てのコンテンツは無料であるべき」という考えは逆に情報化社会をゴミ同然の価値のないコンテンツや情報であふれさせることになり、情報化社会を確実に崩壊させます。
そういう事態を避けるためにも、そして権利者が安心して新しいコンテンツを作れる環境を作るためにも今回の改正は大きな禍根を残すことになるでしょう。
最後にどうも総務省にも経済産業省にもコンテンツ業者が「何も企業努力を苦労していない」などと考えている人間がいるようですが、そういう方は一度映画や音楽の制作現場を見学されることをお勧めします。少なくとも皆さんが考えているほど音楽も映像も「簡単に」「楽に」できるものではないことがおわかりになると思います。クリエーターがどれだけ身を削る思いでコンテンツを作っているか、そのことを理解していない人、何か著作権料等のロイヤリテイによって「楽な生活をしている」などと本気で考えているような人間が少なくないような気がして仕方ありません。そういう方はぜひ一度レコーデイングや映画の撮影の現場を見てみるといいです。「楽をしている」人など一人もいないはずです。
目先の利益のために文化やコンテンツの価値を何が何でも犠牲にするか、もしそういう選択をした場合は十年後はそもそもコピーしたくなる映像やコンテンツ自体がなくなってしまうでしょう。せっかく家電が普及してもそれを一般ユーザーが機器を使う機会自体がなくなる可能性があります。それでもコンテンツー知財の価値を犠牲にするべきだと思いますか?
(おおの きょうじ 作曲家、
有限会社ハイブリッドミュージック代表)
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以上です。賛成する人、反対する人さまざまでしょうが、私は以上の意見を提出いたしました。私の意見が少数派でないことを祈りますが,,,
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コメント
特許や実用新案は、「業として実施」する行為のみが権利の対象なので、個人的な領域での実施行為は、侵害にならないです。
なので、「ああそうですか」です。
インターネットで配布したりするような行為は、個人であっても「業として実施」ですが、それは著作権も一緒です。
「ハードウェアが売れることの利益還元を」と主張する人がいるから、「楽をしている」と言われるのでしょう。
録音については、音楽CDにデジタル録音許諾料を載せて販売すればよいのです。
そうすれば、(レコード会社の方々以外は)誰も文句は言わないですよ。
そういう意味で、「ハードから一定率の金額を回収した金額を権利者に公正に分配する、という方法しか現実的にありません」というのは、ちょっと言い過ぎではないかと思います。
知財制度は難しいですね。
権利保護強化を声高に訴える人も、流通促進を唱える人も、正しい知識を持っていることは稀なので、平行線になってしまいます。
投稿: 匿名希望 | 2009年3月 7日 (土) 10時35分
匿名希望さん コメントありがとうございます。
何となく文脈からメーカー関係の方かななんて勝手に推察させていただきますが...
私もメーカーに短い間ですが在籍していたことがありまして、まあソフト側とハード側の考え方の違い、衝突や対立というのは今に始まったことではないんですが、今回のケースはかなり深刻といえるでしょうね。
ハードは「モノ」を売る商売、ソフトは「権利ー「コト」を売る商売などともいわれます。日本人は農耕民族ということもあり、昔から「モノ」以外は商品ではない、などと考える傾向が非常に強いし、権利で対価を徴収するという考え方を理解できない人が多いようです。匿名希望さんのコメントを拝見してやはりそこの部分が見え隠れします。
>「ハードウェアが売れることの利益還元を」と主張する人がいるから、「楽をしている」と言われるのでしょう。
ではどういう言い方がよいのかわかりませんが、これは単に権利、ロイヤリテイを徴収する一つのプロセスという風に私たちソフト側の人間は認識するんですね。コンテンツは勿論、キャラクターにせよ、音楽や映像にしてもそれを使ったり、コピーした時点で「権利料」が発生するというのはソフトの権利ビジネスとしては当然のことです。それを否定するのはソフトの権利ビジネスを否定するのと同じことだと思います。
>録音については、音楽CDにデジタル録音許諾料を載せて販売すればよいのです。
そうすれば、(レコード会社の方々以外は)誰も文句は言わないですよ。
これは現実的にありえないと思います。ただでさえ現行のCDや音楽配信を「高い」という風にいう人がユーザーの方に多いのが現実ですから、
どうも問題なのはこの「デジタル録音許諾料」がある種「ババ」のような状態になり、これをハードソフト両方が押し付けあうという構造になってしまうようです。これはある意味最悪の展開だと思います。今回の呼びかけをした松武さんもかなり長期戦になる見込みとおっしゃってました。
>知財制度は難しいですね。
権利保護強化を声高に訴える人も、流通促進を唱える人も、正しい知識を持っていることは稀なので、平行線になってしまいます。
これは全くおっしゃるとおりだと思います。ハードの世界の人間はソフトの世界を、ソフトの世界の人間はハードの世界をお互いの違いを理解した上で再度、内容について検討すべきだと思いますね。
知財を尊重すること自体は世界的な流れではありますが、その知財に関する認識は残念ながら低いし、年々寧ろ低くなっていくことを感じます。また総務省や経産省の役人はそもそも知財を本当に尊重するつもりがあるのか甚だ疑問です。いっていることとやろうとしていることが全く逆ですから、ああいうことをしているとただでさえ信用がない官僚は余計信用がなくなりますね。
投稿: Kyoji | 2009年3月 8日 (日) 01時11分
お返事、ありがとうございます。
とりあえず、特許に関する誤解が解けたとすれば、コメントさせていただいた甲斐があったかなと思っています(ブログをお読みになられる方が誤解するといけませんし)。
私が録音録画機器のメーカー関係者かどうかはご想像にお任せしますが、コンテンツの対価はコンテンツの提供時に回収すべき、というように考えています。シンプルなんです。権利を活用して対価を得ることは、全く否定するつもりがないです。
> > 録音については、音楽CDにデジタル録音許諾料を載せて販売すればよいのです。そうすれば、(レコード会社の方々以外は)誰も文句は言わないですよ。
>
> これは現実的にありえないと思います。ただでさえ現行のCDや音楽配信を「高い」という風にいう人がユーザーの方に多いのが現実ですから、
録音録画機器も「高い」という意味では一緒です。私も自分で買うときは、一生懸命値下げ交渉しますから。
なので、CDや音楽配信の提供価格に載せるというのを否定する理由に全くなっていないです(多分、すべてお分かりの上で、補償金制度を肯定するために、苦しいなぁと思いながらおっしゃっていないですか?)。
> コンテンツは勿論、キャラクターにせよ、音楽や映像にしてもそれを使ったり、コピーした時点で「権利料」が発生するというのはソフトの権利ビジネスとしては当然のことです。それを否定するのはソフトの権利ビジネスを否定するのと同じことだと思います。
家庭内での複製行為まで追いかけようとするから、そして、自分たちのコンテンツの価格を値上げすると消費者の反感を買うから録音録画機器の価格に転嫁しよう、という発想が見透かされて、消費者の反感を買ってしまうのでしょうね。
私自身もそうですが、好きなクリエーターのために、コンテンツにちゃんと対価を払いたいんです。
ただ、購入したCDを外出時に聴こうと思ってiPodにコピーするだけで「iPodに課金」とか言われると、本当に萎えてしまいます。
個々のコンテンツの価値・価格で勝負する時代が来るとよいのですが、再販価格維持制度で守られている今の音楽業界には過度の期待でしょうか(実は、ほとんど同じようなことを感じていらっしゃるんじゃないかなぁと思うのですが、気のせいでしょうか)。
投稿: 匿名希望 | 2009年3月 8日 (日) 10時50分
匿名希望さん
レスありがとうございます。
>録音録画機器も「高い」という意味では一緒です。私も自分で買うときは、一生懸命値下げ交渉しますから。
なので、CDや音楽配信の提供価格に載せるというのを否定する理由に全くなっていないです(多分、すべてお分かりの上で、補償金制度を肯定するために、苦しいなぁと思いながらおっしゃっていないですか?)。
この辺は結局前述の「ババ」の押し付け合いの話になってしまいますが、ただ一つご理解いただきたいのはソフトとハードでは価格の幅の桁が全然違うという点です。ハードは発売すれば売上額が億単位に簡単にいきますが、ソフトで億単位の売上を揚げるのはよほど「誰もが知っている超メジャー」でないとなかなかありえない、という点ですね。
まあいわゆる流通の過程での価格での部分はどの業界も大変でしょうが、利幅という点ではハードはソフトの比ではないですから、やはりソフトの方から課金という方法は現実的に難しいと思います。
尚、再販制度の話が出ましたので申し上げますが私自身はCDやDVDの再販による価格維持制度はもはや風前の灯だと思っています。レコ協の中で死守すべきという勢力があるのは事実ですが、CDの量販店がどんどんつぶれている現状では難しいでしょう。再販制度は価格維持という点ではメリットがありますが新規市場開拓という点ではデメリットになります。
ただ、書店もそうですが再販制度を摘要している流通以外で売ろうとしますと掛け率がもう全然違いますし、特に音楽業界は他のコンシューマー流通の凄まじいまでの値段のたたき方に慣れていないので、いきなりその世界に飛び込んだら大半の会社はそれに耐え切れない部分はあるかもしれません。他の業界と違い音楽事務所の殆どは超零細企業(殆どがマンション一室で運営)なので、体力的に対抗できないという部分もあるでしょう。ですからそこの段階に入る前に体制の準備は必要だと思います。
私自身はそれを踏まえて考えてはいますが、果たしてどうかという感じです。
いずれにせよこと流通に関しては音楽は既に崩壊し始めていますから再販制度にしがむついても私は意味がないと考えています。その前に元々の流通自体が消滅する可能性の方が今高いですから...
投稿: Kyoji | 2009年3月 8日 (日) 14時35分
お忙しいところ、再び、お返事いただき、ありがとうございました。
> ただ一つご理解いただきたいのはソフトとハードでは価格の幅の桁が全然違うという点です。ハードは発売すれば売上額が億単位に簡単にいきますが、ソフトで億単位の売上を揚げるのはよほど「誰もが知っている超メジャー」でないとなかなかありえない、という点ですね。
私にはどちらの芝も特に青くは見えないのですが、ハードの方が青く見えていらっしゃるようですね。そんなに簡単に利益が出る状況なら、派遣切りなんていう社会問題も起きないのではないかと。
私は、アーティストの方々の社会保障制度は著作権法とは別に考えるべきだと思っています。また、アーティストの卵を育てるための文化振興などももっと必要だと思います。ただ、私的録音録画補償金制度のような「小額だから誰も気づかない」という消費者を馬鹿にした発想の制度は、終焉を迎えるべきだと思っています。
いずれにしても、貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございました。
投稿: 匿名希望 | 2009年3月 9日 (月) 06時47分
こちらこそ貴重なご意見ありがとうございました。
匿名希望さんのようにアーチストの権利や文化活動の面に一定のご理解をしていただける方がネットだけでなく社会全体にもう少しふえれば状況はまた変わるかもしれないと思います。
今後とも引き続きよろしくお願いします
投稿: Kyoji | 2009年3月 9日 (月) 10時05分