{コラム] I was born to love you
今、弦楽アンサンブル用のロック名曲アレンジをやっているが、6曲あって最後の曲がこの曲である。いわずと知れたQueenの最期のアルバム"Made in Heaven"に収録されている曲でフレデイマーキュリーの遺作となったアルバムである。日本ではビールか何かのCMに使われたので覚えている人もいるだろう。今から10年前に発売されたアルバムである。
とにかくこの曲は美しい。メロデイが美しいし何ともいえない高揚感を与える。ラヴソングは数多くあれどこれほど人を愛する喜びを見事に表現した曲はそうないだろう。いい音楽を聴くと幸せな気分になるがこの曲はそういう気分にさせてくれる曲である。
しかしこの曲を書いている時、フレデイマーキュリーは既にエイズの病魔に侵されていた。Made in Heavenのレコーデイングの時はフレデイは立っているのがやっとだったといわれる。この時フレデイは既に自分の死期を悟っていたのは明らかで死と絶望が目の前にあったはずである。
にもかかわらずこの"Born to love you"をはじめこの"Made in Heaven"の曲はどれも明るく希望に満ちた曲ばかりなのだ。おそらくQueenのアルバムの中でもっとも明るいイメージの曲がそろっているといっていい。実はこれは前々から気になっていたことだった。なぜだろう?
この曲をアレンジしながらこのことを考えていたが、おそらくそれはフレデイマーキュリーをはじめQueenはみんなロックンローラーだからだと思う。つまり死と絶望が目の前にありながら、いやだからこそ死と絶望に反抗し、あえて希望と明るさに満ちた曲ばかり揃えたのではないだろうか? 死神にすら反抗するというロックンロール魂がこのアルバムを作らせたのでは、と。 そう考えた方が自然な気がするのだ。
クラシック音楽でもベートーヴェンがかの第九交響曲で「喜びの歌」を入れていたが、実はこの曲を書いている時のベートーヴェンの私生活はズタズタだった。最愛の甥や恋人から絶縁状をたたき付けられ、作曲の仕事も断られるなど絶望のどん底の時にこの曲を書いていたのだ。これもフレデイ同様、自らを鼓舞し絶望から這い上がろうとする凄まじいまでの生き様が見えてこないだろうか。ベートーヴェンももし現代に生きていたらロックンローラーになっていただろう。
「苦しいときにこそ明るくふるまいなさい」とは成功哲学のジョセフマーフィーの言葉だ。音楽療法の「同質の原理」と全くあべこべのことを云っているが、それを克服できた人間だけがクリエイトできるパワーというものはすごいと思う。"I was born to love you"をはじめ"Made in heaven"はそのパワーがあると思う。
Queenというと「Night at the Opera」とか「News to the World」といった初期の作品のみを中心に語られがちだが、90年代最高のロックアルバムはと聞かれれば私はこの"Made in Heaven"を躊躇せず入れるだろう。
それにしても今回のアレンジものシリーズ、基本的には70年代ロックを中心にするという話だったがずいぶん最近のものも入ってしまった。なぜ入れたかって? それはこの曲があまりに美しい曲だから...
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コメント
第9交響曲のエンディングはすでにロックンロール。ベートーベンこそ、歴史上初のロックンローラーだった。
投稿: Lexar | 2007年4月15日 (日) 18時17分