沢田知可子“替え歌”訴訟ー「替え歌」著作人格権について
芸能やワイドショーとかで話題になっている沢田知可子さんの最大のヒット曲「会いたい」に関する騒動。
話によると沢田知可子さんと作詞家の沢ちひろさんの両者の間には感情のもつれがかなり前からあったらしい。
私は別に当事者とは面識もないし、一応業界関係者なので詳細な実情も把握しないまま安易にこの件に関して語るのはよくないと思っている。
但し今回の騒動に関してマスコミを始め、一般の方の間にも著作権に関する誤解や間違った理解をしているところが少なくないので、その点について述べさせていただく
「替え歌」は違法なのか? 「会いたい」の沢田知可子と作詞家が裁判沙汰
http://www.j-cast.com/2014/12/09222829.htm
結論からいって「替え歌」は違法ではない、但しある条件をクリアした、場合の話だが。
その条件とは著作権の一分野である「著作人格権」をクリアする、という点である。
この「著作人格権」というものはまだ一般の方で理解していない人が多いようなので、解説すると著作者がその著作物に対して有する人格的利益ー平たくいえば自分の作品の意図、思想、感情を尊重するーを保護する権利のことをいう。
もっとわかりやすくいうと、「著作人格権」とは作曲者または作詞者が「俺の曲をあんな使い方しないでくれー」といえる権利である。例えばCMのタイアップ用に作った曲が、作曲者の承諾なしにAV(アダルトビデオ)等に使われたら、それを拒否することができる。
(余談だが私の曲が私が知らない間に実際本当にAVに使われていたことがある、あれにはまいったww)
一部のネットに「きちんと著作権料支払われているのなら、いいじゃねえか」などという論調があったようだが、それは「著作人格権」に対する理解が足りないためにそういう話になる。
当然今回の「替え歌」にしてもたとえ著作権料では作者に従来通り支払われても、作詞家も作曲者も「替え歌」の体裁で公開してほしくない、と「著作人格権」によって拒否することができる。今回の騒動はまさにこの「著作人格権」によって「替え歌」の発表を指し止めの訴訟が起きているためである。
但し「替え歌」は「きちんとしたプロセス」を経れば、いつもこういうことが起きるわけではない。
例えば有名な例は嘉門達夫の「替え歌メドレー」だ。この場合何も問題なかったのは嘉門が「著作人格権」を尊重し、「替え歌」にされた曲の作曲者、作詞者全員にいちいちお伺いをたてて承諾を得たために実現した。これは事務所関係者から直接聞いたので間違いない。
この件に関して嘉門達夫の取った行動は業界関係者からも称賛された。
今回のケースも沢田さんの事務所が沢さんの事務所にあらかじめお伺いをたてて、事前に承諾を得ていればなんの問題もなかったのだが、前述のように沢田さんと沢さんの間に長年の感情のわだかまりがあったようで、それが原因で事前承諾も得られぬまま、ダウンタウンの番組で使ってしまったことが、両者の感情の溝を余計に広げてしまったようだ。
どこでボタンを掛け違えたのか詳細な事情はわからないが、非常に不幸なことである。
まあこの騒動で「著作人格権」に関する理解が世間で広まるといいのだが
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